警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、世界的にヒットしているNetflixのドラマ『地面師たち』を視聴した元地面師が指摘する、現実の地面師との違いについて。
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「『地面師たち』、面白かった。人を殺しすぎだがね」と、かつて自身が地面師として暗躍した暴力団関係者Y氏は笑いながら話し始めた。「地面師が人を殺すことなんてない」という。
綾野剛と豊川悦司がダブル主演を務める『地面師たち』(Netflixシリーズ)は、Netflixの日本トップ10ランキングで連続首位を更新している、今話題のドラマだ。原作は、不動産売買で巨額の金をだまし取る詐欺グループについて描いている新庄耕の『地面師たち』(集英社)。放映開始直後から、暴力団関係者の間でも話題になっていたという。
ドラマのモデルとなったのは2017年に起きた「積水ハウス地面師詐欺事件」。東京都の五反田駅近くにある廃業した旅館の土地を巡って、大手ハウスメーカーとして知られる積水ハウスが、所有者を名乗るなりすましの女性ら詐欺グループに約55億円をだまし取られたという事件だ。事件発覚後、主犯格の1人、カミンスカス操こと小山操はフィリピンに高跳びし、当局に出頭して帰国するまでの様子がメディアで報じられた。この事件により”地面師”と呼ばれる詐欺師の存在が世間に知られるようになった。Y氏はこの地面師事件やカミンスカスをよく知る人物でもある。
「あの事件に、豊悦(豊川悦治)演じる大物地面師で黒幕みたいな者はいない。カミンスカスは強いていえば交渉役の綾野剛といったところだ。実際の事件の”登場人物”は小山(カミンスカス)や土井淑雄、首謀者といわれる内田マイク、その他を含めて17人が逮捕されている。誰がどの役どころに当てはまるかというのはないね。なりすまし役をスカウトする役割や、証明書や印鑑を偽造するなどの役割分担はあったと思うがね」とY氏。
世間でも知られた事件だけに、取引に至った経緯や状況など公開された情報を題材にしているのだろうが、細かな点はドラマがリアルに見えるよう誇張されて作られたものだとY氏はいう。
では、地面師による詐欺の現場とドラマでは何が違うのか。
今の地面師はただの詐欺師
「あの事件以降、警戒されるようになったようだが」とY氏が前置きしたのは、ドラマにあった身分証明書の確認方法だ。「パスポートにライトを当てたり、免許証などに裏から光を当てて透かし、ICチップの確認をしていたが、あんなことはしなかった」という。「そもそもなりすましのパスポートなんて、本物と見比べないとわからない」と軽く笑い声を立てる。