米司法省は、元米中央情報局(CIA)職員で米連邦調査局(FBI)の通訳業務を担当していた契約職員に対して、中国政府に機密情報を提供する見返りに数万ドルの現金や高級ゴルフクラブなどの贈り物を受け取ったとして、9月11日にハワイ州ホノルルの連邦地裁が懲役10年の判決を下したことを明らかにした。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が報じた。
このFBIの元契約職員は香港出身の馬玉清(71)で、2020年8月に逮捕され、その後起訴されていた。
同紙が入手した起訴状によると、馬は米国の市民権を取得後、1982年から1989年までCIAで働いており、米国の機密情報にアクセスできる「セキュリティ・クリアランス」を持っていた。これは、安全保障上重要な情報として指定された情報にアクセスする必要がある人に対し、その人の信頼性を調査・確認した上でアクセスを認める制度である。
馬はこの間、上海出身でやはりCIA職員だった馬の親戚から紹介された中国上海国家安全局員と定期的に接触し、CIA工作員や外国の情報提供者に関する情報のほか、機密作戦、やその他の秘密通信方法に関する情報を渡し、計5万ドルの報酬を得ていたという。
その後、馬は1989年にCIAを辞めるが、2004年3月にはハワイ・ホノルルのFBI事務所で通訳業務を行う契約職員として採用された。FBIは馬がCIA時代、中国のスパイだったことを承知の上で、その活動と中国側との接触を監視し、調査するために馬を雇ったという。
馬は2012年10月までFBIで働いており、この間、「機密情報」などに指定されていた文書をコピーしたり、写真撮影するなどした上で、たびたび中国を訪れ、上海国家安全局員から現金や高価な贈り物をもらっていた。
検察官によると、これらの機密文書は馬を逮捕するための偽文書だった。結局、馬は2020年FBIによるおとり捜査で逮捕されるが、馬は裁判で「私は祖国の成功を望んでいた」などと犯行動機を語っていたという。