「明日死んでもニッコリ笑って逝けますよ」
振り返ると、共演者を家に呼ぶような、家族ぐるみの付き合いをした俳優仲間はいませんでした。別に秘密主義じゃなくて、子どもが5人──息子が3人、娘が2人いましたから、家の中がシッチャカメッチャカで家に呼べなかった(笑)。子どもが1人こっちで泣けば、ほかの子があっちで笑って。お手伝いも2人いたんだけど、とても追いつかない。でも、子どもはかわいかった。あのかわいさはどこにいったのか(笑)。今は本当にニクタラシイ。でも、やっぱりかわいいです。
孫は23歳から小学校1年生まで7人います。一番下の女の子は次女の子どもで、ドイツ人とのハーフ。かわいくてたまらんね! 目に入れても痛くない、とはこのことか、と。もっと会いたいけど、愛媛にいますからなかなか会えない。その子にあげようと思って、毎日500円玉貯金をしています。電話をかけると「じいじ、貯まった?」と聞くのがこれまたかわいくて、毎日電話してしまう。だいたい同じ時間に電話をするから、僕だとわかるんでしょうね。最近は電話に出なくなっちゃった(笑)。
仕事でもプライベートでも、やることはやって楽しんだから、もう明日死んでもニッコリ笑って逝けますよ。みなさんに「いざとなるとバタバタと慌てふためくよ」と言われ、そうなるかもしれない、とも思いますけど、これ以上長生きすると周りに迷惑かけますしね。みっともなくメソメソせずに、今なら女房の手を握って「ありがとさん」と感謝を伝えて、子どもたちにも「たくさん喜ばせてくれてありがとう」と言える気がします。これができれば素敵な人生!
こんなことを言っていると、女房が「あなた、死にたい、死にたい、って言うわりにちゃんと薬飲んで、ちゃんと運動してるじゃない。よく言うわ」と言うんですよ。確かにそのとおり。何も言えません(笑)。
(了。前編から読む)
◆取材・文/中野裕子(ジャーナリスト) 撮影/村上庄吾