自然に交際が始まり、婚約の流れに。銀行員の妻になるはずだったが、その先に人生の一大転機が待っていた。二朗氏と親交の深かった故・田中角栄元首相から「父の跡を継いで政治家になれ」と命じられ、石破氏は政界入りすることとなったのだ。
「青天の霹靂でした。新聞に選挙の候補者として夫の名前が挙がり、銀行を辞めることになったんです。すぐに夫から説明の電話がありました。『そういうことになったけど、突然のことだし、結婚の話はやめたければやめてくれてもいいよ』と言われ…。政治のことはまるで知らなかったので、本当に悩みました」
結婚すべきか、やめるべきか。悩む佳子さんに父親がこうアドバイスしたという。
「君は、結婚相手を『職業』で選ぶのか、『人物』で選ぶのか」
その一言で、佳子さんの気持ちは決まった。1983年9月、東京・赤坂のホテルニューオータニでの挙式に出席した田中元首相は、佳子さんが勤める総合商社が絡んだ「ロッキード事件」で窮地に立たされていた。しかし、主賓として「いい会社だよ。わしのことがなければ、もっといい会社だ」とスピーチして、会場をどっと沸かせた。
(第2回に続く)