中国・深セン市の日本人学校に通う男児が殺害されるとい痛ましい事件が起きてもなお、中国のSNSでは日本人憎悪の書き込みが溢れている。中国に関する著書が多数ある社会学者・橋爪大三郎氏は、中国共産党政府の“危うい生存戦略”が、こうした危機的状況を招いたのだと指摘する。
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今回の事件の下地には、中国の「反日教育」「行き過ぎたナショナリズム」の存在がある。では、なぜ長年にわたり反日教育が続けられてきたのか。それは、中国共産党が国をまとめる「正統性」を必要としているからだ。
中国共産党はもはや、共産主義による世界革命を目指していない。それはソ連と対立して米国と国交を結んだ時からはっきりしている。にもかかわらず中国共産党が政権を握り続ける理由が必要になり、その答えがナショナリズムになった。
それはつまり、“悪い日本を打倒して独立を勝ち取った”という物語だ。
中国共産党は半植民地状態から日本軍を打倒して独立を達成し、中華人民共和国をつくった。実際にはその間、中国共産党が日本軍から資金提供を受け、情報を提供して国民党を攻撃させていたのだが、その歴史はなかったことにして、「中国共産党は一貫して日本と戦い、中国のナショナリズムのために正しいことだけをやりました」と見せようとしている。
それが反日教育の中身であり、つまりは嘘だ。でも、嘘も百遍言うと本当になる。
そうした教育しか知らないのが、今の中国の成人の大多数になった。すると「日本に反対するのは正しく、許される」という感覚が生まれ、今回の事件のようなことを実行する人も出てくる。
中国共産党の願望、戦略から生み出された「中国ナショナリズム」は、非常に危うい。