「タイミングが悪い訪中になった」──自民党内でそう見られているのが二階俊博・元幹事長だ。
日中友好議員連盟会長の二階氏は8月27~29日、議員団10人で北京を訪問。王毅・外相との会談で「若い世代の交流が重要」と日中間で互いの国への修学旅行を推進することを提案し、王氏も賛同したと報じられた。
だが、深センの日本人学校に通う児童殺害の事件が起きると、「児童が狙われるような国に、日本の子供たちを修学旅行に行かせるのはとんでもない」と反発を浴びている。
そもそも6月に江蘇省蘇州市で日本人学校のスクールバスが襲撃される事件があった後での提案であることを見逃してはならないが、親中派の元自民党議員は背景をこう見る。
「二階さんの中国パイプは野中広務・元自民党幹事長から引き継いだもの。その根っこには、日本は先の戦争で中国に多大な迷惑をかけたから、日中友好を進めなければならないとの強い思いがある。修学旅行の提案は、昨今、日中の若い世代に嫌中、反日の意識が高まっているのを憂慮して、若い世代が互いの国を知ることで融和を図ろうという思いでしょう」
だが、二階氏の地元支援者によると、もっと現実的な計算がありそうだ。
今期限りで政界を引退する二階氏は、今回の訪中に後継者で次の総選挙に和歌山新2区から出馬予定の三男・伸康氏を同行させた。和歌山の地方議員が語る。
「伸康さんは、『習近平には会えなかった』と残念そうでしたが、二階さんは伸康さんに中国パイプを引き継がせようとしているのでしょう。
特に選挙区の観光地・南紀白浜はこの夏、南海トラフ地震の臨時情報や台風で海水浴場が立ち入り禁止となり、経済的に大きな損失を出した。だから、中国から修学旅行客を呼びこんで選挙でアピールしたいという狙いもある。今回の訪中で二階さんは中国側に、南紀白浜のアドベンチャーワールドにいるパンダが全部メスなので、オスのパンダが欲しいとも要請し、中国側は前向きだったそうです。実現すれば伸康さんにとっても大きな功績として宣伝できるわけです」
中国側への修学旅行提案が、地盤を継ぐ息子の選挙を有利にするためなのであれば、何をか言わんや、である。
※週刊ポスト2024年10月11日号