国際的な人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(本部・米ニューヨーク)と香港民主評議会(本部・米ワシントン)は、共同で香港の学問の自由に関する報告書を発表した。中国政府が2020年6月30日に香港国家安全維持法を施行して以来、香港の学問の自由は大幅に低下しており、大学の教員や学生らも香港当局の厳しい取り締まりを恐れて、自由に研究に打ち込めない環境にいるなどと指摘した。
報告書は「私たちはもう真実を書けない 国家安全維持法の下での香港の学問の自由」と題するもので、両団体が9月24日にそれぞれのホームページ上で発表した。
その中で「中国政府は香港の大学に対するイデオロギー的支配を最優先事項と考えており、多くの学生や教員がいま、攻撃の標的となっている」、「大学に当局による大きな圧力がかかり、大学の学問の自由が抑圧されており、表現、集会、結社の自由のすべてが脅威にさらされている」と指摘している。
大学内では現在、中国共産党や中国の現代史などをテーマにした研究は敬遠されている。これまで自由に学問の追求に慣れ親しんできた香港の学生や教員は自主規制を強いられており、このままでは学問の自由は衰退する一方ではないかと、強い危機感を抱いているという。
香港では国家安全維持法が施行されて以来、民主化デモなどに参加した多くの学生が逮捕されており、中国共産党は昨年、香港を含む中国全土の学校、大学、宗教施設で「愛国教育」を強化すると発表している。このため、大学を含む香港の教育機関では、政治的に当局から危険と見なされる科目やテーマへの取り組みを取り止め、愛国的な「国家安全保障教育」などを科目として取り上げる傾向が強まっている。