13歳のときに北朝鮮に拉致された横田めぐみさんも、10月5日に60歳の還暦を迎えた。一方でめぐみさんの父・横田滋さんが2020年に亡くなるなど拉致被害者家族の高齢化も進んでおり、親世代の存命中の帰国実現を望む声は根強い。拉致問題解決を願っているのは、日本人だけではない。キリスト教カトリックの総本山であるバチカンのフランチェスコ・モンテリーズィ枢機卿も、解決に向けて祈りを続けている。長きにわたって拉致問題解決に向けた活動取り組むアーティストのさかもと未明さんが、横田滋さん・早紀江さん夫妻との交流を振り返りつつ、今年3月に実現したモンテリーズィ枢機卿へのインタビューの内容をレポートする。
結婚式で「親代わり」を引き受けてくれた横田夫妻
「お父さんとお母さんは、めぐみが元気でいると信じています。でもめぐみとは随分年の差がありますから、短い期間でも急に亡くなるということはあり得る。ただ、めぐみのために頑張ったということだけは理解してほしいと思います。早く救出できなかったことをお詫びする……と言うのは親子で変なんですけれど、それはとても残念に思っています」
2014年、私と主人が住む家に横田滋・早紀江夫妻が来て、めぐみさんに残す「遺言」としての動画撮影に協力してくれた。上記はその時の滋さんのコメントだ。勿論、「遺言にならないでほしい」と思って撮影した。しかし6年後の2020年、滋さんは遂に、娘のめぐみさんに再会かなわないまま鬼籍に入られた。
2001年に私は拉致問題の取材のために街宣活動に加わり、横田夫妻と知り合った。2002年の小泉訪朝の前から携わったため、横田夫妻だけでなく、飯塚繁雄さんや増本照明さんら、他の拉致被害者家族も心を開いてくださった。
横田夫妻と縁が深まったのは私が難病に罹患し、2008年ごろから体が不自由になったためだ。体力が衰えて「救う会」などの会合に参加が叶わなくなり、漫画家なのに「手が動かなくなる」と医師に予告されて歌を始めると、夫妻でコンサートの応援に来てくれた。
病気が悪化し歩くことも仕事もできなくなったとき、私が親と疎遠で相談できずに困っていると知った横田夫妻は、「自分の娘が異国で不自由しているのではと思うので、似たような年齢で病気の未明さんを放っておけない」と、実の親のように親切にして下さった。