中国で「物言う企業家」として知られ、2020年当時には中国政府の新型コロナ政策について習近平国家主席を批判するなど、「中国のトランプ」との異名をもつ実業家、任志強氏(73)が、現在獄中で前立腺癌を患い、重篤の状態になっていることが明らかになった。任氏の親族は、習氏に手紙を送り、海外での病気治療ができるよう懇願し、さらにこの手紙は10月2日にSNS上でも公開されたが、中国当局はこの申し出を無視しているという。米政府系報道機関「ボイス・オフ・アメリカ(VOA)」が報じた。
任氏は華東地産有限公司の董事長(会長)や北京市政治協商会議委員などを歴任。引退後の2020年には、習氏ら当局が新型コロナウイルスの感染状況を隠蔽しているなどとして、習氏を「裸になって皇帝になることを主張した道化師」と激しく批判していた。
その後、中国共産党規律検査委員会は、任氏を汚職、贈収賄、公的資金の横領、権力乱用の容疑で逮捕。任氏は北京第2中級人民法院(裁判所)で懲役18年の判決を受けた。
任氏は現在、73歳になっているが、罹患していた前立腺癌が悪化し、すでに重篤な状態だという。このため、任氏の親族が習氏に手紙を送り、「家族からの度重なる懇願にもかかわらず、彼は手術を受けることを許されず、私たちは深く苦しみ、絶望的になっています」としたうえで、「(任氏が)治療のために海外に行く機会を与えてください。これは家族の最後の希望というだけでなく、生命を尊重することでもあります。 寛容で共感的な決断は、痛ましい後悔ではなく、歴史の優しさの証となるでしょう」としたためている。
中国では、「反革命罪」などで計4回も投獄されたノーベル平和賞受賞作家で人権活動家の劉暁波氏が、獄中で肝臓がんを患い、米国などが劉氏の受け入れを表明したが、当局は海外での治療を許さず、劉氏は2017年7月13日、獄中で死去した例がある。