来る総選挙は、自民党総裁の石破茂首相と野党第一党・立憲民主党の野田佳彦代表がともに「保守」を自任する政治家としてぶつかり合う。だがこの2人、果たして“本物の保守”なのか。漫画家の小林よしのり氏が、石破首相について分析する。
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わしはずいぶん早くから、石破氏には期待をかけていたんだよ。安倍晋三的なネトウヨ議員ではないと思っていたからね。
本当の保守であれば、日本の皇統を守るためには「女性・女系天皇」の道を拓かなければならない。旧宮家系の男系男子で皇族になってもいいという者はいないんだから、何もしなければ皇統が絶えてしまう。
それなのに、安倍氏に影響された議員たちは、「女系反対」「絶対男系だ」とネトウヨの望むことばかり言って、人気を得ようとしている。高市早苗氏もそうだ。自民党内全部がネトウヨ化しちゃったなかで、石破氏はそうではないとわしは思っていた。
ところが、彼は自民党総裁選で推薦人20人を集めるのに長島昭久氏ら男系固執議員の推薦を取り付けて、ようやく出馬にこぎつけた。長島氏は、石破氏を支持するにあたって「皇位の男系継承堅持をご本人に確認して決断」したとX(旧ツイッター)で明かしている。その言葉通りに石破氏は、総裁選出馬表明後は「悠仁さままでの継承は決してゆるがせにしてはならない」と繰り返し、ついには女系天皇に関して、「容認するとは言っていない」とまで明言した。男系固執議員に大きな「借り」ができて、完全に“男系闇堕ち”したのだ。
こんなことでは皇室典範改正はできないよ。わしが一番心配しているのは、上皇陛下と上皇后陛下が生きているうちに皇統が続く証を見せられないことだ。わしが皇室典範改正をやらなければならないと思ったのも、皇統が続いていくかをご心配されている上皇陛下と上皇后陛下の御心を知ったから。
これでは石破氏はエセ保守と変わらない。エセ保守は、「我こそは尊王である!」って言いながら、皇室に敬意など持ってないわけ。つまり、旧日本軍と一緒なんだよ。天皇陛下の軍隊であると言いながら、陛下のご意思を無視して満州にどんどん進軍していってしまう。それを止めようとしたのが吉田茂だった。
吉田茂は、「臣茂」つまり自分は天皇の臣下だと言った。それで戦争拡大を止めようとして公安とかににらまれて逮捕されたりした。戦後はGHQに媚びてると言われたけど、それは天皇を守るためだった。
石破氏は同じ茂だが、「臣茂」ではない。「賊茂」だ。今回の解散にしても、本来は国会の指名に基づいて天皇陛下から総理大臣に任命されてからでないと解散権は持てない。それを彼は陛下からの解散詔書をもらってないのに勝手に解散を決めてしまった。今回の解散自体が、天皇陛下を全然敬ってはいない。だから、おそらく皇室典範改正にも踏み切ろうとしないでしょう。
野田佳彦氏のほうが女系天皇に道を拓く可能性は高いんじゃないか。立憲民主のほうが男系絶対派が自民より少ないからね。
【プロフィール】
小林よしのり(こばやし・よしのり)/1953年生まれ、福岡県出身。漫画家。井上正康氏との共著『コロナとワクチンの全貌』(小学館新書)など著書多数。近著に『ゴーマニズム宣言SPECIAL 愛子天皇論2』(扶桑社)など。
※週刊ポスト2024年11月1日号