選挙期間最終日となった10月26日、各候補が有権者への最後の訴えに声を振り絞った。苦戦が伝えられる自民党だが、選挙戦の最終盤になって裏金問題で非公認とした候補者の選挙区支部にも公認料相当の活動費2000万円を支給していたことが発覚。さらなる逆風に見舞われることとなった。この状況に、裏金問題による処分とは無関係だった議員たちからも、執行部への批判とも取れる声があがった。
「自民党はけしからんのですよ。私もそう思っています」
26日、自民党の公認候補でありながらこう批判したのは、神奈川17区(小田原市・秦野市など)で5期目に挑む、牧島かれん氏(47)。立憲民主党の佐々木奈保美氏(55)との女性同士の一騎打ちの構図に手を焼くなかで、政治とカネをめぐる逆風をもろに受け、苦言せずにはいられなかったようだ。
自民党執行部に対しては、“裏公認料”とも揶揄された2000万円の活動費支給をめぐり、非公認で選挙を戦う萩生田光一氏が「ありがた迷惑だ」と痛烈に批判して金も突き返したが、執行部と距離がある“裏金候補”側からでなく、不記載がなかった“非・裏金候補”からも次々公然と執行部批判が飛び出すあたり、選挙後にも禍根を残すのは間違いなさそうだ。
前哨戦での想定外の敗北
河野洋平・元衆院議長の地盤を引き継いで2012年に初当選した牧島氏は、党では出世の登竜門と言われる青年局長、岸田内閣ではデジタル大臣を務めた若手の実力派で、将来の女性総理候補と見る向きもある。
前回2021年の選挙では投票が締め切られると同時に「当確」が出るいわゆる“ゼロ打ち”だっただけに、地元では今回も、牧島の優位は揺るがないという見方があった。
ところが、牧島氏にとっては想定外の苦しい展開が待っていた。
ひとつは“前哨戦”での敗北だ。今年5月に行なわれた地元の小田原市長選で、自民党系の現職市長(当時)が野党系のリベラル系前職に2万票の大差で敗れたのだ。
その「敗因」は、市民病院の建て替え工事をめぐって現職市長と業者の間に癒着疑惑が浮上したことに加え、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との近い関係が明るみに出たこと。そうして“古い自民党”を叩く機運があるなかで国政選挙を迎え、野党にとっては弾みがついている。