自転車とバイクのいいとこ取りをした新しい乗り物として「モペット」が人気だ。この新しい乗り物は、排気量50cc以下もしくは出力600ワット以下のエンジン、もしくは電気モーターを搭載した運転免許が必要な「ペダル付き原動機付自転車」のことだ。だが、街中ではナンバーもヘルメットもない状態で走り回っている不届き者も少なくなく、たびたび取締りの様子がニュースにもなっている。ライターの宮添優氏が、それでも違法モペットライダーを続ける人たちや、違法改造で爆速疾走する電動アシスト自転車の存在についてレポートする。
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主に都市部で高いニーズがあるとされる、近距離しか移動しないという「ちょい乗り」需要。それに応えるように、東京や大阪などの大都市では「電動キックボード」を気軽にレンタルできるようになった。だが、信号無視や一方通行の逆送、さらには飲酒運転による摘発者も相次ぎ、死亡事故まで発生。メディアでも連日大々的に取り上げられ、問題視されている。
さらに最近、やはり都市部で目立つようになってきているのは、自転車とほとんど見分けのつかない「モペット」と呼ばれるペダルがついたフル電動自転車や、違法な改造を施した電動自転車の利用者による危険な運転だ。普段は主に東京の渋谷や新宿近辺を走っているという現役のタクシー運転手の男性がこぼす。
「新宿から渋谷に向かって明治通りを走っているとね、車の左脇をスーッと音もなく通っていくんですわ。モペットって言われているあれです。原付(バイク)なんかよりもスピードが出ているのに、ノーヘルで信号も守らないから、危なっかしくてね。ああいうのに乗っているのは若いおしゃれ系の男が多いけど、運転もでたらめなんだよな。社内でも、モペットや電動キックボードの事故に注意するよう言われるけど、こっちが注意したってあっちが危ないんだからさ」(タクシー運転手)
「モペット」とは、簡単に言えば、バイクに自転車のペダルがついたような乗り物で、モーターが始動していなくてもペダルをこげばすすみ、逆にペダルをこがなくてもモーターで自走することも可能だ。公道を走るにはナンバープレートをつけて、自賠責保険に加入し、ヘルメットを着用して乗ることが義務づけられている。自転車とほとんど変わらない見た目のモペットも存在するが、道路交通法上は原動機付き自転車に分類されるので、基本的には「原付バイク」と同じような乗り物、という理解で問題ないだろう。