「雨の御堂筋」や「ラヴ・イズ・オーヴァー」などのヒット曲で知られる台湾出身の歌姫、欧陽菲菲(オーヤン・フィーフィー、75才)。歌手としての表舞台からは、15年余り遠ざかっているが、その姪で音楽家や女優として活動する欧陽娜娜(オーヤン・ナナ、24才、以下ナナ)の人気が、中華圏で急上昇しているのだが、そのナナが、信じがたい理由で窮地に陥っている。なんと、台湾の世論から“殺人教唆”という謂れのない罪を問われているのだ。
まず、ナナの経歴から振り返ろう。彼女はその美貌だけでなく、音楽の才能も豊かだ。10才でチェリストとしてデビューすると、2013年には史上最年少の13才でアメリカの名門校・カーティス音楽院に入学。翌年には映画に出演し女優業にも進出した。
「2024年にアメリカの名門、バークリー音楽大学を卒業しているのですが、既に学生時代から、“トップアーティスト”といえる存在感でした。これまでに台湾だけでなく中国、そして日本でもアルバムをリリースしています。日本では欧陽菲菲の“美人すぎる姪っ子”などと言われたこともありますが、伯母さんの名前を借りる必要がないほど知名度を上げています。インスタグラムのフォロワー数は約370万人もいて、この数字は今後もっと伸びていくでしょうね」(芸能関係者)
それだけに、今の彼女の窮地は、急転直下といえる。発端は、彼女がネット上で繰り返した発言にあるという。台湾メディアの芸能担当記者が話す。
「ナナさんは、中国人民解放軍が台湾を周辺で軍事演習を行った10月14日、ウェイボー(中国版X)でこのニュースを引用し、『台湾は古来、中国の領土である。中国は一つ!』と投稿したのです。さらに、満州事変のきっかけとなった柳条湖事件が起きた9月18日には、『九一八を忘れない』と投稿。さらにそれ以前にも、中国政府が抗日戦勝記念日と制定する9月3日には、『抗戦勝利79周年、愛する私の中華』と、中国政府の立場に立った投稿をしているのです」
台湾の一部のネット民は彼女の一連の投稿に反発。SNS上では《中国が武力統一を行えば多くの台湾人が殺されることになる。それを分かっているのか》、《個人の政治的思想は尊重するが国益や生命に関わることを危険に晒すことは許されない》
と、彼女を批判する投稿が湧いた。そうしたネット世論を汲み取って声を上げたのは、台湾の女性作家の顔擇雅氏だ。彼女はFacebook上で「台湾の憲法は言論の自由を保障しているが、中共の武力による台湾侵攻を支持することは殺人教唆とも言える。非平和的手段によって国外敵対勢力が我が国の主権を脅かすことを教唆する行為は罰金刑だけでなく、国籍抹消も視野に法改正を行うべき」と主張したのだ。
これに「意を得たり」の反中ネット民は、ナナへの反発をエスカレート。彼女以外にも親中発言を行ったタレントを名指しし、「殺人教唆で刑事告発しよう」という呼びかけも行われている。