「オイ! オイ! オイ! オイ!」——ドレッドヘアの男性を中心に、若者たちが大挙して押し寄せる。興奮のるつぼと化した群衆からは歓声が上がり、周辺の人々は身動きが取れない状況だった。声を揃えて若者が合唱する最中、男性2人が揉み合いになると、周囲は「乗れ! 乗れ!」と囃し立てた——。
10月31日の夜22時ごろ、ハロウィン当日の渋谷では多くの警察官や警備員が動員され、厳戒態勢が敷かれていた。人が集まりやすい「ハチ公像」周辺は封鎖され、警官らが拡声器で「立ち止まらないでください!」などと通行人らを誘導。スクランブル交差点には50人前後の警備員が配置され、センター街は一歩通行に。周辺では「写真を撮らないで! 止まらず歩いてください!」と繰り返しアナウンスがあった。
渋谷区は昨年に続き、渋谷駅周辺に来ないよう呼びかけている。昨年は「街に来ないで」と広く呼びかけたことで来街者が想定よりも激減。今年は「渋谷は、ハロウィンをお休みします」などとメッセージを発信していた。テレビは、その結果として「大きな混乱はない」と報じていた。しかし——20代の男性は興奮した様子でこう話していた。
「きっとヤバいことになりますよ」
「今日、いろんなラッパーが渋谷に来るんすよ。カニエ(イェ)も来るって聞きました。きっとヤバいことになりますよ」
午後8時30分ごろ、まず宮下公園近くで歓声が上がった。100人ほどの若者が集まり、写真撮影や握手を求める中心にいたのは、ピラフ星人(21)。楽曲『ピラピー』がInstagram、TikTokを中心にバズっている、新進気鋭のラッパーだ。20分ほど揉みくちゃにされたピラフ星人はその後、雑踏から逃れるように暗闇に姿を消した。
そして午後10時過ぎ——公園や商業施設が一体となった「MIYASHITA PARK」近くの「神宮前六丁目」交差点で突如歓声が上がった。周囲の若者が集まり、スマホを掲げながら移動していく。群衆の中央にはドレッドヘアの男性がいた。沖縄出身のラッパー・OZworld(26)だ。