エステサロンを利用する際に、「SNS投稿で報酬がもらえる」と勧誘され、高額な契約を結んだものの、実際には報酬が支払われなくなる被害が多発した。
消費者庁は2024年10月24日、このような勧誘手法に対する注意喚起を発表した。特に20代女性を中心とした被害報告が相次ぎ、全国の消費生活センターには多くの相談が寄せられている。
無料エステ体験から始まる勧誘手法
ステルスマーケティング(ステマ)は2023年10月1日から景品表示法違反になった。ステマとは、SNSなどで広告であるにもかかわらず、広告であることをかくして情報発信すること。ステマそのものが問題だが、そのステマに加担させ、加担者から金銭を巻き上げる詐欺が存在している。今回消費者庁は、その詐欺行為に対して注意喚起した。
今回問題となった詐欺は、2023年秋以降にエステサロンを舞台に行われた。報酬付きのステマに誘い込まれ、それに参加するために「加盟料」という不透明な金銭を取られた挙げ句に、最初の数カ月を除くと何ら報酬を得られずに、事業者にとんずらされるというものだ。同様のケースが多発した。
詐欺の顛末の次の通りだ。
被害者はまず無料のエステ体験を通じて勧誘を受ける。例えば、友人の紹介や美容系の予約アプリを通じ、無料エステの施術が受けられると知らされ、公式LINEや予約アプリで予約を行う。施術を体験した後、「月に1回SNSで広告を投稿するだけで月1万円の報酬が得られる」と説明を受け、副業としての勧誘が行われる。興味を示した被害者は次回の訪問を促される形で、再度エステサロンを訪れる。
その上で、次回来店した人は、「SNSでのPRにはエージェント加盟が必要」と説明され、エージェントへの加盟金として150万円の支払いを求められる。被害者は、報酬の期待から分割払いで5年間222万円のクレジット契約を結ぶ。しかし、その後、約束された報酬は最初の数カ月を除くと支払われず、最終的には事業者との連絡が途絶えてしまう。
実態と被害状況—消費者庁が明らかにした事実
消費者庁の調査によると、この勧誘手法を利用している複数の事業者が、消費者の利益を不当に害するおそれのある行為である「不実告知」に行っていたとして、消費者安全法に基づいて情報が公表された。
2事業者は、株式会社ライフパートナーズと株式会社NEOマーケティング。
ステマは違法だが、それに関連した詐欺も存在しており、注意が必要だ。消費者庁は、「エステと副業の異業種タッグ」による詐欺として注意喚起している。ヒフコNEWSでは、ステマに関する連載を掲載しており、ステマの問題についてはそちらを参考にできる。
参考文献
「SNSでPR投稿をすると報酬がもらえる」とエステサロンで勧誘する事業者に関する注意喚起
痩せるのは財布だけ、LINEのだまし横行、消費者庁が高額ダイエットお茶などの詐欺行為に注意喚起
ステマと美容医療 Vol.1 「ステマ」が景品表示法違反に──美容医療広告にも影響がある? 消費者庁による検討会を振り返って考える
ステマと美容医療 Vol.6 はじめしゃちょーも発言、インフルエンサーとステマ防止 消費者庁による検討会を振り返って考える⑥
ステマと美容医療 Vol.7 ステマ規制の対象になるケースとは、消費者庁による検討会を振り返って考える⑦
【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。
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