火野正平

脚本を持ち歩き現場でセリフを入れた

自叙伝に記されているノウハウと女性に対する心がけ

 火野さんは2016年に自叙伝『火野正平 若くなるには、時間がかかる』(講談社)を上梓しました。そこにも「大切な教訓」が満ち満ちています。

〈俺はもともと向こうから電波を発信されてから、アンテナで捉えて受けに行くタイプなんだよ。(中略)じゃあ「飯でも食いに行くか」とか「電話番号書いとけ」とか言ってやらなきゃいけないとか。そういうのをなるべく受信してやらなきゃいけないと思ってる〉

〈昔よく使った手なんだけど「絶対にそうなるんだから、早くなった方がいいじゃないか」っていうのがあったね。(中略)俺も思ってるし、相手だったどこかで思ってるんだから。それでさ、「そうだね」って言ってくれればしめたもんだよな〉

〈(かつて付き合っていた女性と数十年ぶりに再会した話の中で)でも綺麗だったな、まだ。もちろん年は取ってるんだけど。(中略)綺麗の中には、いろんなことが含まれるじゃない。見た目が綺麗っていうこともあるし、汚れてないってことも綺麗だし。相手のいいところ探すのが上手かどうかはわからんけど、どっかいいところあるやろって探すよな〉

 どれも難易度の高いノウハウですが、モテるにはこうした心がけ(自分に自信を持つ、図々しさを忘れない、相手を全面的に肯定する)が必要なんだと感じさせてくれます。

 昭和のいい部分も悪い部分も知っている中高年世代としては、男女の機微やほのかに色っぽいやり取りの楽しさが、イチャモンを付けられて迫害されている事態を黙って見過ごすわけにはいきません。「昭和の色男」のスピリッツをしっかり受け継ごうではありませんか。なれるかどうかはさておき、全力で「令和の火野正平」を目指しましょう。

 この話の流れで触れてたいへん恐縮ですが、昭和人間がどう生きていくか、何に気を付けるかを考える『昭和人間のトリセツ』(石原壮一郎著、日経プレミアシリーズ)という本が、つい最近出ました。男女関係も含めた昭和の価値観をどう受け止め、どう有効に生かしていくかという内容でもあります。ただ、たぶん読んでもモテるようにはなりません。

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