今、「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」という言葉が注目を集めている。これは、自ら気づかぬうちに社会的なステレオタイプを内面化し、その影響が日常の判断や行動に表れる現象を指す。人々の意思決定に無意識のうちに作用し、時に選択の幅を狭めている。
かつて昭和の時代には、性別、年齢、職業、家庭内の役割などに対して画一的な価値観が浸透していた。その価値観は、家族や社会の中で当然視され、疑問を持たれることが少なかった。時代が進み、多様性を重んじる社会となった令和においても、これらの偏見は完全には解消されておらず、むしろ無意識の領域で現在の意思決定に深く影響を与え続けている。
今回、そういった時代錯誤な、いまだに現代の生活にはびこり人々を悩み苦しめるアンコンシャス・バイアスを“昭和な呪い”と敢えて命名し、そのストレスから心を解放するためのマインドエクササイズ本を上梓した、婚活コンサルタントの松尾知枝氏にお話を伺った。【全3回の第1回】
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3万人以上の婚活相談者に寄り添ってきた松尾知枝氏は、クライアントとの対話の中から、その課題の多くが恋愛や結婚に関するスペックや駆け引きの技術などの問題ではなく、社会や家庭で受け継がれてきた固定観念に起因しているとういことに気がついたと言う。その偏見が、人々の自己評価や行動の自由を制限していると語る。
「多くの女性の結婚をサポートをしてきましたが、その過程で気づいたことがありました。婚活をするお客様は、異口同音に『早く結婚しなくては』といいます。それも、“結婚したい”ではなく“結婚しなくては”なのです。」