大相撲九州場所は入場券が15日間の全日程で完売。年6場所の全90日間が「札止め」となるのは「若貴ブーム」の1996年以来28年ぶりのことだ。久々の相撲ブームとなっているが、一方では長く土俵に最高位として君臨した宮城野親方(元横綱・白鵬)の処遇が宙に浮いたままとなっており、その余波が様々な方面に及んでいるようだ。
相撲ブームのなかでも懸念されているのが「新弟子の数」だ。昨年は1年間で過去最低の53人に。力士数も45年ぶりに600人割れとなった。今年1年間の新弟子は62人と微増したものの、全盛期に比べればほど遠い水準だ。相撲担当記者が言う。
「若貴ブームの頃のような客入りでも、新弟子の数は全く違う。当時は1992年が223人、1993年が221人と2年連続で200人超えでした。新弟子確保は親方衆の間での最大の問題となっている。大卒ルーキーが増え、中卒の叩き上げが激減しているという一面もあります」
2024年に入門した62人のうち、大学(中退含む)や社会人出身が15人。うち7人が幕下や三段目の付け出しデビューの有資格者だった。相撲ジャーナリストが言う。
「そんな状況でもコンスタントに新弟子を集めてきたのが元横綱・白鵬の宮城野親方です。元幕内・石浦の間垣親方の父親が校長である鳥取城北高校との関係を深め、卒業生を大学や社会人に進ませてタイトルを獲得させる。そうして付け出し資格をつけて宮城野部屋に入門させてきた。
代表例は実業団横綱として幕下15枚目格付け出しで入門した伯桜鵬。今年3月場所で、幕下最下位格付け出しとして入門した松井も、鳥取城北高校卒業後に伯桜鵬の実家の『野田組』に所属して国体8強の実績を残して新弟子となった。3月場所が初土俵だったモンゴル出身の聖白鵬もそうしたうちのひとりです」
白鵬の夢は「モンゴル人部屋」
聖白鵬は鳥取城北高校から同志社大に進んだ経歴の持ち主。モンゴル相撲の世界で、聖白鵬の曾祖父は白鵬の父親を指導し、白鵬の父親は聖白鵬の父親を指導したという関係だ。同志社大を卒業後、昨年4月から宮城野部屋の研修生となっていたが、今年3月場所後に不祥事で閉鎖されることになっていた宮城野部屋に駆け込みで入門している。
「白鵬の夢は“モンゴル人部屋”だといいます。しかし、外国出身力士は1部屋1人と決まっている。そこで白鵬は相撲協会の“10年間日本で住んでいる外国出身の新弟子は日本出身扱いになる”というルールに着目して、有望なモンゴルの小学生を日本に相撲留学させ、中学、高校、大学と10年間、日本で学ばせることで日本出身者として入門させようとしてきた。
その“第一号”がモンゴル国籍ながら5歳の時に母親が語学留学のために来日して、白鵬の紹介で中学から鳥取に相撲留学した北青鵬でした。鳥取西中学、鳥取城北高校を卒業後、日本出身扱いとして宮城野部屋に入門した。ただ、その北青鵬がイジメ事件で引退となり、宮城野部屋が閉鎖となるきっかけになったのだから皮肉なものです。こうした新弟子の集め方に批判的な声があるため、白鵬の処分が重くなったともいわれている」(前出・相撲ジャーナリスト)