台湾軍は11月下旬の1週間、台北市内の国立政治大学キャンパスで、中国人民解放軍との市街戦を想定した予備役による軍事訓練を行った。しかし、この軍事演習に対して有識者の間から「政治大学が中国軍の標的になる可能性がある」などとの批判が出ている。台湾国防部(省に相当)は「中国人民解放軍の攻撃を阻止するために、最前線での攻防戦を再現する必要があった」などと説明している。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。
同大学は台湾の中でも、政治家や学者など優秀な人材を輩出していることで知られる名門大学のひとつ。今回のように、軍事訓練に協力するのは初めてのことであり、市民からは驚きをもって受け止められている。
台湾では、過去にも大学などで演習を行った例はあるが、夏休みなどで学生が大学を離れている時期が選ばれていた。今回のように、台湾軍が首都である台北市内の大学で、平日に学生が講義を受けている時間に訓練を行うのは初めてだという。
また、一部の学生は軍事訓練に参加しており、実際に実弾を詰めた機関銃の発射訓練などを受けている。これらの武器や弾薬の一部は大学内に保管されていることなどから、今後、学生たちの生活を混乱させる懸念もあるとの指摘も出ている。
市民からもこの異例の軍事訓練に批判も出ているが、台湾の国防部はこれについて、中国軍は今年5月に発足した民進党の頼清徳政権を「台湾独立派」とみなして、同政権発足直後から大規模軍事訓練や実弾演習を行っており、台湾を守るための軍事訓練は不可欠だなどとして、今回の政治大学での軍事訓練の必要性と正当性を訴えている。