半年後、残念ながら彼女と別れることになり、高校近くの喫茶店で別れ話をすることになりました。向かい合わせで座って口数も少なくなってきた頃、有線放送で『エマニエル夫人』のテーマ曲が流れてきたんです。ミレド、ミレド、ミレド、ミレド、ファ♪ 馴染みのない響きのフランス語が憂いを帯びた、悲しげなメロディにのって。すると、彼女と過ごした楽しかった思い出が走馬灯のように蘇ってきて、二人で大泣きしました。
『エマニエル夫人』のテーマ曲を聴きながら号泣している高校生カップル。はたから見たら奇妙な光景だったかもしれませんが、私はこの時に「音楽の力ってすごいな」と思い知らされました。今でもあの曲を聴くと、胸をギュッと締め付けられる思いがします。私にとって『エマニエル夫人』は、音楽という面から見ても思い出深い映画なのです。
【プロフィール】
嘉門タツオ(かもん・たつお)/1959年生まれ、大阪府出身。1983年『ヤンキーの兄ちゃんのうた』でレコードデビュー。1992年『鼻から牛乳』が大ヒット。笑いと音楽の融合という独自のジャンルを確立した。2024年12月18日に配信シングル『大阪・関西万博エキスポ〜港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ〜』をリリース。2025年3月19日には28年ぶりとなるメジャーオリジナルアルバム『至福の楽園~歌と笑いのパラダイス~』が発売。ライブツアーの詳細は嘉門タツオHPまで。
取材・文/小野雅彦