ポーランドのアガタ・コルンハウザー大統領夫人と並んで歩く金建希大統領夫人(写真/AFP=時事)

ポーランドのアガタ・コルンハウザー大統領夫人と並んで歩く金建希大統領夫人(写真/AFP=時事)

 一般の国民がSNSで整形に言及するレベルをはるかに超えて、野党(共に民主党)議員たちまで公然と容姿を批判。

「大統領は(夫人を外遊に同行させることで)韓国を整形の国だと広報するのか」

「服装がオードリー・ヘプバーンのパクリだ」

 もちろん政治と無関係の批判には否定的な声も多く聞かれるが、大統領以上にその振る舞いを「監視」され続けてきたのが金建希夫人であり、それが政権の「アキレス腱」になっていたのは間違いないことである。

 金建希夫人のスキャンダルは、尹錫悦大統領がまだ「大統領候補」だった時代から国内メディアによって報じられてきた。過去の求職活動の際に、虚偽の経歴や受賞歴を記入した経歴詐称疑惑や、修士論文の剽窃疑惑などがあり、いずれも軽微な内容だったが本人が事実関係を認め謝罪している。

 金建希夫人には、実母に関する疑惑もある。母親の崔殷淳(チェ・ウンソン)は土地取引にかかる残高証明書の偽造容疑で起訴され、2023年に懲役1年の実刑判決が確定している。

 いずれも政争に巻き込まれたとの見方もあるが、大統領の妻と義母を攻め立てる野党の動きは止まっていない。

 韓国国会は12月7日、夫人の株価操作などの疑惑を、政府から独立した特別検察官に捜査させる「金建希女史特検法」の採決が行われたが、200票以上の賛成で可決される状況のなか、賛成198、反対102とギリギリのところで否決された。

 国政をめぐる今後の情勢は流動的だが、少なくとも尹大統領が最高権力者の座にとどまる限り、夫人への批判が弱まることはないだろう。

 2014年に起きた大韓航空「ナッツ・リターン」事件、あるいは2017年に起きた朴槿恵大統領の罷免もそうだったが、権力者、あるいは権力者に近い女性に対する韓国の国民目線は非常に厳しいものがある。

 今回の政治的混乱にある種の「既視感」を覚えるのは、私だけではないだろう。いずれにせよ、今回の戒厳令が韓国近代史の汚点となってしまったことは間違いないようだ。

◆申光秀(ジャーナリスト ソウル外信記者クラブ)

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