レギュラーシーズン3位から26年ぶりに日本シリーズを制した横浜DeNA。日本一を決めた第6戦、2回に先制の中越えソロ、5回2死満塁で走者一掃の適時二塁打を放つなど4打点の大活躍でチームを頂点に導いたのが、シーズン途中にメジャーから電撃復帰した筒香嘉智(33)だった。
「シーズン中は試合があるのでなかなか調整できなかったんですが、日本シリーズ3日前ぐらいの練習で急に見つかって。『この感覚で打席に入ったら打てるんじゃないか』という手ごたえがありました。メジャーに行く前の形に戻したというより、新しい感覚がアジャストしたイメージです」
1673日ぶりの日本復帰戦では右中間への逆転3ランを放ち、逆転勝利の立役者となった。だが、筒香は「本当にたまたまです。感覚がしっくりこなかった。このまま打てるほど甘くない」と苦難を覚悟していた。
6月下旬以降はスタメンから外れ、さらに左脇腹の疲労骨折で7月上旬から1か月以上戦列を離れた。
「1人の選手である以上、試合に出て勝利に貢献したいという気持ちは当然です。チームに貢献できていない申し訳なさがありました。米国でも経験したことですが、眠れなかったり、食欲が落ちた時もありました」
だが、苦境にあえいでいた時期も周囲を気遣い、声をかけていた。メジャー挑戦前から筒香を知る選手、スタッフは「人柄が柔らかくなった」と口をそろえる。米国で紆余曲折を味わったことで視野が広がり、メンタルをコントロールできるようになったのだろう。
「日本一になってファンの方たちに少しは恩返しできたかなと思いますけど、やっぱりリーグ優勝して日本一を達成することが最も価値があることだと思います。個人的には迷惑をかけてしまいましたが、最後に良い感覚がやっと戻ってきたので来年が楽しみです」
取材・文/平尾類
※週刊ポスト2024年12月27日号