キャリア官僚、総合商社、外資系コンサル……。東大生の卒業後の進路といえば、華々しい就職先を思い浮かべるだろう。就職では苦労とは無縁のイメージの東大生だが、それはあくまで「新卒一括採用」での話のようだ。卒業後に正社員として勤務したことのない「既卒」では事情が異なり、たとえ“東大卒”であっても、エントリーシートが通らず苦戦を強いられることがあるのだという。なぜ選考を通過できないのか。
昨年発売された『ヤバイ東大解剖録』(KADOKAWA)で、富山県トップの公立進学校から東大法学部という経歴を生かし「東大のリアル」を描いた、チャンネル登録者数50万超えYouTuber・チェリー東大あきぴで氏が、自身の経験から「既卒就活」の現実を赤裸々に明かす。(同書より一部抜粋して再構成)【全3回の第3回。第1回を読む】
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僕は2020年に東大を卒業したのだが、実際に就活を始めたのは2022年5月で、2023年の新卒枠として就活をはじめた。
なぜ就活をはじめるのが遅くなったのかというと、それは僕が「俳優」を目指していたからだ。以前から演劇というものに触れる機会が多く、ゆくゆくはそれを仕事にしていきたいと、学生時代からやんわり思っていた。
そこで縁あって、僕は大学4年から3年間とある劇団のお世話になることになった。しかし、既卒2年目が終わる時点で、これから演劇で食えていくビジョンがまったく見えず、たまに会う大学同期との格差や社会からの孤立感、いろいろなものが僕の神経をすり減らしていき、これ以上僕に演劇を続ける元気はなくなっていった。気がつけばいつも就活サイトを開いていた。
こうして後ろ向きな気持ちではじまった就活だったが、真っ先に困ったのはエントリーシート。東大なのに、これが恐ろしいほど通らないのだ。
確か30~40社ほど出して通過率は20~30%だった。最初は片っ端から大手企業にエントリーシートを出しまくっていた。それ以外に保険として地元で幅をきかせている地方銀行や電力会社なんかも受けた。エントリーシートなんて落ちたことがないという東大の同期の話はチラホラ聞いていたので、いくら既卒といえども大丈夫だろうと高を括っていたが、それは完全に誤算だった。
結果的に大企業も地元からも完全に見捨てられた。なぜこんなにもエントリーシートが通らなかったのか。その理由は簡単、「既卒差別」だ。
そもそもたくさん同レベル大学の優秀な新卒が応募してくる大企業が、わざわざ既卒、しかも3年目の東大を取る理由がなかった。
そして、地元の企業も東大とはいえ、卒業してから2年も経っているヤバイやつを雇いたいと思うほど革新的な風土はなかった。
新卒であれば通ったであろうエントリーシートの段階で、僕はことごとく落ちていった。
浪人や留年と違って、既卒だけが就活市場でヤバイやつ認定を受ける。どこにも就職が決まらないほど難がある人なのかな、卒業してからプラプラ遊んでいた怠惰な人なのかな。そういった印象を企業に与えてしまうからだ。