韓国政府が2024年12月27日、タトゥー用インクの安全性を管理するための新基準案を発表した。2025年6月に新基準が施行される見通しだ。
禁止成分や濃度制限成分をリストに
タトゥー用インクは、皮膚内に取り込まれるため、細菌などの病原体による感染リスクがあるほか、含有成分が健康に悪影響を及ぼす可能性が指摘されている。一方で、インクの品質を確保するための規制強化が求められている。
今回、韓国食品医薬品安全処(MFDS)が発表した新基準案の規制により、禁止成分や濃度制限が具体的に定められる。
新基準では、「パラベン」や「多環芳香族炭化水素」など72種類の禁止成分のほか、「バリウム」や「ニッケル」、「コバルト」など10種類の濃度制限成分がリスト化される。
さらに、タトゥー用インクの無菌性の確保も義務化されて、細菌による汚染のリスクが大幅に低くなると見込まれている。
また、製品の使用方法や保存期限などの詳細な表示が義務付けられる予定だ。これらの基準は、欧州連合(EU)の規制を参考に制定された。
日本にはタトゥー行為のガイドライン
日本では厚生労働省の研究班が2022年度にタトゥー行為のガイドラインをまとめた。その内容は安全に施術を行うための衛生管理の方法を示したもの。このガイドラインは、一部でタトゥー用インクの使い方について示しているが、インク自体の基準を定めているわけではない。
日本では最高裁判所の判決により、タトゥー施術は医行為に該当しないと判断され、刺青の彫り師がタトゥーを実施可能になっている。厚労省はアートメイクについては医行為として医師により行われるべきものと通知を出している。一方で、米国では12月、米国食品医薬品局(FDA)がタトゥーインクによる健康被害の発生を受けて安全性についての注意喚起を出している。そうした中で、タトゥー用インクの安全性が保たれることは日本でも重要性を増しているといえる。アートメイクで使われるインクの安全性も点検が必要である可能性がある。韓国の新基準は参考になりそうだ。
参考文献
식약처, 구강관리용품과 문신용 염료 기준·규격(안) 행정예고
厚労省による「タトゥー行為に係る安全管理ガイドライン案」の公表について
厚労省がアートメイクは医療行為と通知、タトゥーとの違いを最高裁判決などから判断
タトゥーインクの安全性に米国で注意喚起、汚染や成分不明などの健康のリスクに懸念、食品医薬品局(FDA)が注意すべきポイントを公表
刺青(タトゥー)とアートメイク、「刺青施術に医師免許は不要」の司法判断を否定するのか?「通知は可及的早急に撤回を」、連載【細川亙 現代美容医療を殿が斬る】Vol.1
タトゥーと悪性リンパ腫の発症リスク増加が関連、刺青レーザー除去もリスクに関連、スウェーデンの研究グループが発表
タトゥーで見る現代人の心理学、コンプレックスや身体醜形障害との関連も?ポーランド研究が明かす自己表現と心の健康
【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。
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