関東芸界にある「ウラ3大タイトル」(イラスト/佐野文二郎)
放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、「ビートたけし杯」「高田文夫のビバデミー賞」について綴る。
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関東の芸界にはコア過ぎる「ウラ3大タイトル」がある。世間には認知されていないがプロなら欲しがるトロフィーである。「ビートたけし杯」「みうらじゅん賞」「高田文夫のビバデミー賞」である。
その「たけし杯」が2月7日浅草の東洋館で静かな熱気の中開催された。審査員はたけし氏、私、“漫才協会”会長塙のいるナイツ。関東としては申し分無しの面々だ。本番前1時間以上ずっと喋っていたのだがなんか楽しいネ。中学の時の友達に会ったようななつかしさと妙なおかしみがある。一緒に悪さした事が身体にしみ込んでいるのかもしれない。「海外で頭ぶつけて数日間記憶喪失になっちゃって」とか「M1の〇〇なんて面白かないよな」など相変わらず痛快。
たけし杯ノミネートは8組だったのだが「ハマノとヘンミ」「シティホテル3号室」の2組受賞。舞台上で若手芸人達に檄を飛ばす姿は感動的。個々にアドバイスもしていた。若手にとっちゃ生涯の宝だろう。
一方、私の『ラジオビバリー昼ズ』から誕生した「ビバデミー賞」。前年活躍したなとか私が個人的に好きだなとか、忖度と癒着を中心とした賞。
この度発表し表彰したのは阿部サダヲ。今さら『不適切にもほどがある!』を讃えても仕方がないのだが、クドカンも私も大いに認める“いだてんユーモア”の持ち主。実はこれで3度目、しかもV3なのだ。コンプライアンスのこの時代、その芸名が何よりもどれよりも不適切であろう。チョン切られても生きていくその姿勢が素晴らしい。映画『はたらく細胞』も上出来らしい(知らないけど)。
そしてもうひとりは唯一無二の芸で「笑い」の道を極めるロバート秋山。私はテレ東の『秋山ロケの地図』が好きだったが、先日特番でカムバックした。意外や意外一般家庭の家に入っていってもみんな熱烈歓迎。常識人の中に入ってもキチンと溶け込むおかしさ。
そして何といっても昨年はあの黒光りテカテカにテカッて肥えてあの時代を平然と生きる『光る君へ』でラストまで出演しつづけた凄味である。『光る君へ』ではなく私は「テカる君へ」と呼び表彰した。
そして何よりこの男の魅力は話にきく自由人の父親。イラスト後方は蝶野選手ではなくその父だ。なにやら若き日はヤクザ映画などに出て斬られ役の役者だったとか。秋山から聞くその父の姿はとんでもなくノーコンプラだ。
※週刊ポスト2025年2月28日・3月7日号