北朝鮮では兵士に支給するコートも不足(写真は金正恩氏/時事通信フォト)
北朝鮮では1月から2月にかけて、シベリアからの寒気が押し寄せ、気温はマイナス20度にまで下がり、市民は例年以上の寒さに震えている。このような状況のなか、北朝鮮の警察である社会保障局は今年1月から、高級品とされる犬の毛皮を裏打ちしたコートを街頭で市民から没収していることが明らかになった。主に、酷寒のなか軍務についている朝鮮人民軍兵士に支給するためだという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
没収されたコートを支給されるのは韓国との国境地帯で軍務につく兵士など、重要任務を与えられている兵士に限られるという。社会保障局員が街頭で市民から強制的に着ているコートを剥ぐようにして没収するのは、前例がないとみられる。
その理由としては兵士に支給するコートが不足しているためだ。北朝鮮では原則として、兵士には夏用制服を1年に1回、冬服は2年ごとに1回、支給することになっている。しかし、北朝鮮経済の悪化により支給が滞るようになっており、苦肉の策として軍は兵士に除隊時に制服を返却するよう要求し、そのお古を他の兵士に渡すようにしているなどの事情がある。
高品質の犬の毛皮の裏地付きコートは、最高級品なら政府職員の年収ほどもするといい、犬の毛皮のコートを着ている市民はそれほど多いわけではない。それでも、海外との取引をしている貿易商らはこれらの高級コートを買うことができるため、そのような人が運悪く没収の憂き目に遭うというが、“被害”に遭った市民は懲罰を恐れて、没収されても文句を言うことはほとんどいないという。
北朝鮮兵士はウクライナに派遣された1万2000人のうち、4000人以上が死傷したといわれるが、兵士も市民もともに困難な状況に置かれているようだ。