YouTubeで武田さんの「チャルダッシュ」の口笛演奏を聴き、超絶技巧にひっくり返る
暖かい日が増えてきて、散歩でもしたい季節ですが、外に出ると花粉が……という人も多いのでは? そんないまだからこそ、部屋の中で花粉を避けて読書をしましょう。オススメの新刊4冊を紹介します。
『口笛のはなし』武田裕煕✕最相葉月/ミシマ社/2200円
武田さんは口笛の元世界チャンピオン。最相さんとの対談の目次を眺め、すぐに実践編に飛んで口笛吹きになりたいと気がせくが、口笛の世界史や文化史、芸能史も面白い。口笛大国アイルランド、エストニアの口笛禁止、坂本九と口笛や、霊と口笛など書ききれないほど話題は広大。5カ国語を話す武田さんは超絶エリート。その教えもあって、口笛、音が出せるようになりました!
キーワードはふたりの“みちる”。地縁や知縁がこのサスペンスを優しくする
『月とアマリリス』町田そのこ/小学館/1870円
東京で宿願の事件記者になったものの、ある事件で自罰感情に苛まれ、失意のうちに故郷の北九州に戻った飯塚みちる。元恋人で元上司の堂本宗次郎から電話がかかってくる。地元の山中で発見された白骨遺体の事件をルポしないかと。地縁や知縁が歯車になる著者初のサスペンスながら、その興趣以上に女性達の様々な(悲痛な、寛容な、利他的な)ヴォイスが心に残る新境地作。
本当の自分とは異なっても、「寛容で知恵のある年長者」として振る舞うべし
『祖父母の品格 孫を持つすべての人へ』坂東眞理子/朝日新書/924円
「おばあちゃん仮説」というのがある。閉経女性が若い女性の子育てを応援すると子供が多く生まれるのだとか。孫育てにはポイントが。肯定する、褒める、経験や知恵という「無形資産」を授けるなど。AI進化の時代でも嘘をつかない、約束を守る、困っている人を助けるなど人間として大事なものは普遍だからだ。タマゴ(他人の孫)ちゃんも支えようというのも著者らしい理念。
江戸川区を舞台にした荒川青春シリーズ。『ひと』『まち』に続く第3弾は兄妹物語
『いえ』小野寺史宜/祥伝社文庫/902円
三上傑、25歳。妹がデート中に事故に遭い、左足が少し不自由に。車を運転していたのは傑の中学からの友人、大河だった。事故後の家族間のぎくしゃく、大河への複雑な思い、職場のパートさんとの軋轢など、日常に巣くうモヤモヤで物語は進むが、特筆すべきは登場人物達が気持ちを言語化する時の濁りのなさ。だからモヤモヤの晴れ方に邪念がなく、温かい。次も読みたい。
文/温水ゆかり
※女性セブン2025年3月27日・4月3日号