「愛国教育」の研修旅行中に何があったのか(写真は習近平氏/AFP=時事)
今年2月末、香港の高校生が中国共産党の歴史などを学ぶ中国本土での「愛国教育」の研修旅行中に死亡するという事件が起きたが、いまだにはっきりとした死因などは公表されていない。
一部の生徒たちの間では、その高校生は中国本土の生徒とけんかして死亡したなどの情報が飛び交っており、市民の間から香港政府に対して、原因究明を求める声が相次いでいるという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
死亡したのは、香港の名門として知られるキリスト教系のセントポールズカレッジ付属中等学校5年生(6年制で、日本では高校2年生に相当)の生徒で、2月下旬に4泊5日の日程で、中国浙江省杭州市の中国共産革命の聖地のひとつとされ嘉興南湖などを訪問する研修旅行に参加していたが、2月28日に死亡したという。
これについて、香港メディアは自殺の可能性のほか、持病による病死、あるいは、この生徒が「トラブルに巻き込まれていた」との目撃談も報じており、市民の間からも「香港政府の政府は事実を公表すべきだ」などと声が出ている。
これを受けて、香港政府教育局は3月7日、この生徒の死亡について、「現在、調査は終了しており、事件が中国との交流活動や視察旅行とは何の関係もない」としながらも、死因などの詳しい事情については、「家族の希望を尊重し、事件の詳細は開示しない」と発表するに至った。
香港政府は2021年から学校教育カリキュラムの一環として、すべての中学生が少なくとも一度は中国本土を訪れ、共産革命の聖地を見学するなどの「愛国教育」の研修旅行を義務付けている。今回のように、旅行中に生徒が死亡するケースは初めてだという。
それだけに、生徒の死亡から1カ月以上が経過するなか、保護者の間からは、「しっかりとした説明がなければ、子供を大陸の研修旅行に行かせることができない」などとの声も出るなど、香港政府は対応に苦慮しているようだ。