当局の逆鱗に触れたか(写真は習近平氏/AFP=時事)
中国・重慶市の地方裁判所は3月下旬、同市在住の女性民主化運動活動家・陳明宇氏が昨年5月20日に同市内で20人以上の仲間とともに、台湾の頼清徳総統の就任祝賀会を開いたことで身柄を拘束された事件で、懲役2年半の判決を下した。
陳氏はこれまでも民主化活動をしていることや、さらに中国にとって敏感な政治問題である「台湾総統就任祝賀会」開催も合わせて、当局の逆鱗に触れたことで、実刑判決を受けたとみられる。米政府系報道機関「ボイス・オフ・アメリカ(VOA)」が報じた。
陳氏は裁判で、「頼清徳氏の台湾総統を祝うことは罪になるのか」などと主張したが、検察側は重慶市のレストランで開いた祝賀会で乱痴気騒ぎを起こして、他の客とけんかとなり、けがを負わせたなどと指摘した。しかし、陳氏は「実際にはけんかなどは起きておらず、検察側の言いがかりだ」などと反論したが、その主張は認められず、陳氏は傷害罪などで、懲役2年半の刑を宣告されたという。
陳氏同様、祝賀会に参加していたメンバーも次々と逮捕、起訴されており、今後も陳氏同様、有罪判決が下される可能性が高いとみられる。
陳氏が民主化運動に身を投じたきっかけは、陳氏の兄である陳明華氏が25年前に、農地をめぐる争いで警官に射殺されたことからだという。兄の遺体は強制的に火葬されたが、遺灰が家族の元に返されていないままになっていることや、その後、2014年に、重慶市政府が陳家の家を取り壊したことから、陳氏は、当局への抗議行動を繰り返したという。その結果、陳氏は当局のブラックリストに入ることになった。
今回の場合、頼清徳氏の台湾総統就任の祝賀会ということで、店側から当局に密告され、他の20人以上の仲間ともに、身柄を拘束された後、正式に逮捕・起訴され、有罪判決が下ったわけだが、中国の台湾に対する締め付けは国の内外で一層強まっているようだ。