いま高田文夫氏が注目する3作品(イラスト/佐野文二郎)
放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回はニューヨーク、吉原、“師匠”の孫が取り組むセックスワーカーについて。
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エロティックで過激ながらちょいとユーモラス、ニューヨークのセックスワーカーの女性を描いた『ANORA アノーラ』がいいと周りから聞いて年がいもなく股間を押えて映画館へ。さすが本年度アカデミー賞5部門受賞である。ショーン・ベイカー監督は言う。「配給会社はまず映画館の上映に力を入れて欲しい」と。パソコンやらスマホで映画を見られてしまう事への危機感だろう。映画館でこそ映画を見て欲しい。丸の内TOEIがこの夏で閉じるという寂しいニュースも耳にする。
主演のアノーラを演じたマイキー・マディソン(初主演)には監督が大好きだと言う梶芽衣子の『女囚701号 さそり』を徹底的に見せたという。さそりの千本ノックである。「梶さんの姿が堂々として力強く、その姿、力強さのDNAを受け継いで欲しかった」とぞっこん。
一方その頃日本では江戸のセックスワーカーである私も通い詰めた江戸は吉原遊郭の女郎を描いている『べらぼう』が話題。我々オールドメディアの元祖のような蔦屋重三郎(横浜流星)がいなせにとびまわる。
余談すぎる余談ですが今書いてて気付いた。蔦重が横浜なら高校野球の優勝も横浜。これはみんな私の大好きないしだあゆみ『ブルー・ライト・ヨコハマ』への追悼なんですかネ。話がそれました。「やばいよやばいよ」、これも横浜の出川哲朗(蔦金という老舗の海苔屋の若旦那)。またそれました。
それにしても私が以前からこのコラムに書いている通り花魁“瀬川”を演じている小芝風花は見事でしょ。アノーラも瀬川もまわりからの差別を受けながらセックスワーカーとしての誇り、意地、覚悟、意志の強さなどをまとって生き抜く。瀬川は身請けをされたが(しかしその後の苦労が今描かれている)、アノーラの望むロシアの大富豪との結婚は……?
そうだ! だいぶ前に試写会で見たので忘れかけていたがこの5月に上映される『うぉっしゅ』という映画。外ではファッショナブルなソープ嬢として働き、家へ帰ればお婆ちゃん(研ナオコ)の介護が待っている。外では男性の身体を洗い、家ではお婆ちゃんの身体を洗う。まさにウォッシュなセックスワーカーなのだ。
この作品の岡崎育之介監督とは何を隠そう(別に隠さなくてもいいのだが)私と“幻の師弟”といわれる永六輔氏の孫なのだ。上を向いて撮り続けたらしい。「なんかあったら宣伝しといて下さいよ」と甘ったれるのでここに書いておいた。いよいよ時代はセックスワーカーなのか。
※週刊ポスト2025年4月18・25日号