CDで聴く大阪芸人たちのネタ(イラスト/佐野文二郎)
放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、関西・大阪万博の開幕に合わせて、CDで聴く、大阪の芸人たちのネタについて。
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「よっこいしょ」とカバンを降ろし、たった今仙台から帰ってきたところ。今回は「オール日芸寄席in仙台」と題して宮藤官九郎センセを帯同して「クドカン凱旋公演」の趣。最強の後輩達は志らく、白鳥、一之輔。気の合う一味と1泊2日、76歳にしてまだまだ舞台ではじけるこの私。さてと……この一座、秋は何処へ行くかな。お楽しみ。
仙台の話を書いてる場合ではない、あと数日で関西万博なのだ。大丈夫なのか。『世界の国からこんにちは』、三波春夫先生の歌声も聞こえてこないけど。55年前、私も大学4年の時に“運のツキの石”見たわ。
さぁそこで大阪の芸人達も元気だ。前の万博の頃、大阪の“爆笑三羽烏”といえば「仁鶴・三枝(今の文枝)・可朝」であった。“浪花の怪人”月亭可朝と言えばギターにカンカン帽で『嘆きのボイン』。コンプラも天ぷらもない時代だった。可朝といえば「ボイン」と「博奕」と突然の「立候補」。談志が立候補したので応援を頼まれ東京へむかう途中、ふと気がついて「何で人の応援せにゃならんのよ。オレも立候補しよう」そのまま手続き。公約が「赤線復活」「銭湯の男湯と女湯の境を無くそう」。受かるか!
2018年に80歳で亡くなったその可朝がCDで復活した。たしか限定30枚(?)くらいのレアなものだから探すのが大変だがお好きな方はどうぞ。キチンと古典が五席。「坊主茶屋」「住吉駕籠」ほか。得意の古典五席(手札)が揃ったのでCDタイトルが『ロイヤルストレートフラッシュ』という訳。イヨッバクチ打ち!
次なる関西万博は、替え歌王でもある嘉門タツオの新CD『至福の楽園』。この多作ぶりにはあきれる。『鼻から牛乳 令和篇』なんてのから大好きな万博を歌った『大阪・関西万博エキスポ』。元々は噺家だった嘉門だがたて続けに笑瓶、雀々と仲間を失なった。そこで曲も作って録音『バイバイ笑瓶ちゃん』。みな早逝して人生のオチがうまく行かなかった仲間達である。
もう一枚は京都に生まれ枝雀に憧れ、東京へ来て立川談笑門下、吉笑となりこの度真打昇進。この男、新作に対する才能は只ならぬものがある。六席入った『立川吉笑落語傑作選』をきいてみるがよい。「真打昇進披露興行in高円寺」は10日間。座・高円寺1にて6月24日(ゲスト志の輔)より。私と神田伯山が出るのは6月30日。7月2日は昇太、3日は談春が各々応援出演します。期待の星。
※週刊ポスト2025年5月2日号