ライフ

フィラー注入に「医師関与」など規制強化、オーストラリア州政府が指針、ナース主体のクリニックに衝撃広がる、クイーンズランド州保健当局の5ページの書面で発表

日本でも、注入療法は医師が行う必要がある(写真提供/イメージマート)

日本でも、注入療法は医師が行う必要がある(写真提供/イメージマート)

 オーストラリアのクイーンズランド州保健当局が、ヒアルロン酸注入やボツリヌス療法などの施術に関し、医師常勤を義務付けるなどの規制強化を通知し、これがナース主体の美容クリニックに衝撃を与えている。

 日本でも、注入療法は医師が行う必要があるが、医師不在で施術を行うクリニックの存在がうかがわれる例があり、違法な施術が行われている可能性もある。

 日本では2025年に業界ガイドラインが策定される見通しだが、オーストラリアの動きは参考になる。

医師の常勤などの条件を具体的に示す

・オーストラリアの新規制:クイーンズランド州が2024年12月に美容医療に関する通知を発表。医師の関与を強化し、処方箋が必要な注入施術(ヒアルロン酸やボツリヌス療法など)の条件を厳格化。
・規制の具体的内容:医師やナースプラクティショナーの診療なしでは薬剤の購入が不可。複数の人が管理する場合も責任者が必要となり、対面診察または厳格な診察が必須に。
・背景と影響:美容医療トラブルの増加を受けた規制強化。今後、クリニックには医師やナースプラクティショナーの常駐・頻繁な訪問が求められる可能性がある。

 オーストラリアのクイーンズランド州は、2024年12月に美容医療に関する通知を出した。この通知では、処方箋が必要な製剤(オーストラリアではS4に分類)を使用する注入施術において、クリニックに医師の強い関与など具体的な条件を課している。

 こうした処方箋が必要な製剤には、ヒアルロン酸やボツリヌス療法、バイオスティミュレーターなどが含まれる。オーストラリアでは、こうしたフィラー注入を行えるのは、医師、ナースプラクティショナー(注:日本ではナースプラクティショナーは一般的ではないが、医師の行う施術の一部を行うことができる専門的な医療資格のこと)に加え、登録看護師などに限られている。

 これに加えて、今回の通知文書では、医師やナースプラクティショナーによる診療・購入・管理への関与をより強く求める規制強化につながる内容となった。

 具体的には、実際にその場で診療していなければ在庫の購入はできず、複数の人が薬剤を管理する場合にも医師などの責任者が求められる。また、対面診察または厳格な診察が必要となる。

 この通知は、注入製剤の取り扱いを定めた法律(注:Medicines and Poisons Act 2019(MPA)、Medicines and Poisons (Medicines) Regulation 2021(MPMR))に基づき、具体的な運用方針を示している。

 このような通知が出された背景には、オーストラリアでの美容医療トラブルがあると考えられる。オーストラリアでは、美容医療トラブルの減少を目的として、規制強化が進められていた。

 こうした状況の中で今回の通知が出されたことにより、美容医療の施術において、医師やナースプラクティショナーが美容クリニックに常駐または頻繁に訪問することが求められる可能性がある。

多くの美容クリニックが違法となる懸念が浮上

・ナース主体のクリニックへの影響:クイーンズランド州の新規制により、ナース主体の美容クリニックでの施術が困難に。遠隔医療による施術も違法と見なされる可能性があり、美容医療界に衝撃を与えている。
・違法状態への懸念:ナース主体のクリニックでは、事故発生時に保険適用外となる恐れがあり、事実上、多くのクリニックが違法状態に陥る可能性が指摘されている。
・日本への影響:日本でも業界ガイドラインが作成予定で、オーストラリアの規制が参考になる可能性がある。

 こうした通知は、ナース主体のクリニックが多い中で施術が困難になるとの見方につながり、同地域の美容医療界に衝撃を与えている。

 オーストラリア国内の報道では、従来の慣行として、ナース主体の美容クリニックで施術が行われたり、遠隔医療で実施されたりすることが違法と見なされると解釈されている。

 万が一、美容施術で事故が起きた場合、ナース主体のクリニックでは保険が適用されない可能性がある。

 事実上、多くのクリニックが違法状態に陥る可能性がある。

 クイーンズランド州では、美容施術を行う上で、医師やナースプラクティショナーの直接関与が必要とする方針になりそうだ。この方針がオーストラリア全土に広がるかどうかが注目されている。

 日本では、フィラー注入は医師が行う必要がある。一方、日本でも厚生労働省の調査により、施術がカウンセラーや受付によって行われている事例が明らかになっている。また、ヒフコNEWSの取材でも、医師不在のクリニックが存在する可能性が指摘されている。こうした状況の中、日本では業界ガイドラインが作成される見通しであり、その中でオーストラリアの規制も参考になる可能性がある。

参考文献
Medicines in beauty treatment/cosmetic businesses

Queensland injectable rules confusion

Queensland Releases Updates To S4 Cosmetic Guidelines For Practitioners And Nurses.

オーストラリアが推し進める、美容医療規制の新潮流、アラガンレポートより

オーストラリアの美容医療規制、認証と安全性の厳しいルールを示す

【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

ヒフコNEWS

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

関連キーワード

トピックス

不倫が報じられた錦織圭、妻の元モデル・観月あこ(時事通信フォト/Instagramより)
《結婚写真を残しながら》錦織圭の不倫報道、猛反対された元モデル妻「観月あこ」との“苦難の6年交際”
NEWSポストセブン
国民民主党から参院選比例代表に立候補することに関して記者会見する山尾志桜里元衆院議員。自身の疑惑などについても釈明した(時事通信フォト)
《国民民主党の支持率急落》山尾志桜里氏の公認取り消し騒動で露呈した玉木雄一郎代表の「キョロ充」ぷり 公認候補には「汚物まみれの4人衆」との酷評も出る
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《永野芽郁に新展開》二人三脚の“イケメンマネージャー”が不倫疑惑騒動のなかで退所していた…ショックの永野は「海外でリフレッシュ」も“犯人探し”に着手
NEWSポストセブン
“親友”との断絶が報じられた浅田真央(2019年)
《村上佳菜子と“断絶”報道》「親友といえど“損切り”した」と関係者…浅田真央がアイスショー『BEYOND』にかけた“熱い思い”と“過酷な舞台裏”
NEWSポストセブン
「松井監督」が意外なほど早く実現する可能性が浮上
【長嶋茂雄さんとの約束が果たされる日】「巨人・松井秀喜監督」早期実現の可能性 渡邉恒雄氏逝去、背番号55が空席…整いつつある状況
週刊ポスト
発見場所となったのはJR大宮駅から2.5キロほど離れた場所に位置するマンション
「短髪の歌舞伎役者みたいな爽やかなイケメンで、優しくて…」知人が証言した頭蓋骨殺人・齋藤純容疑者の“意外な素顔”と一家を襲った“悲劇”《さいたま市》
NEWSポストセブン
6月15日のオリックス対巨人戦で始球式に登板した福森さん(撮影/加藤慶)
「病状は9回2アウトで後がないけど、最後に勝てばいい…」希少がんと戦う甲子園スターを絶望の底から救った「大阪桐蔭からの学び」《オリックス・森がお立ち台で涙》
NEWSポストセブン
2人の間にはあるトラブルが起きていた
《浅田真央と村上佳菜子が断絶状態か》「ここまで色んな事があった」「人の悪口なんて絶対言わない」恒例の“誕生日ツーショット”が消えた日…インスタに残された意味深投稿
NEWSポストセブン
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン