「医療は無料」のはずなのに…(金正恩氏。写真/朝鮮通信=時事)
北朝鮮では建国当初からの建前だった「医療は無料」が崩れつつあり、初診料や治療費、薬代などが有料になり、病院内に料金表が張り出されていることが明らかになった。
北朝鮮では国民皆保険制度が敷かれ、公衆衛生法では国家が完全かつ包括的な無料医療を提供することを規定しているものの、実際には患者は薬代などの費用を一部自己負担していた。しかし、国家財政が厳しくなっていることに加え医薬品不足も深刻なことから、現在では診療代が公に表示されるようになったという。昨年から全額負担となっている病院もあり、住民は大きなショックを受けている。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
北朝鮮北東部の咸鏡北道(県に相当)では昨年から道内の病院が「人民病院」の看板を外して、地区や市に基づいた名前に変更し始めており、それに伴って、今年2月から初診料や診察代金、薬代を請求されるようになった。それ以前は無料で診察を受けることができていたというが、最近ではたとえ病気になっても、重病でなければ、病院に行かず、我慢して自宅で療養する人も多いという。
また、中国と国境を接する北朝鮮西部の平安北道では、病院の入り口付近の受付の場所に料金表が貼られるようになっており、初診料が5000ウォン(約70円)、診察料が5000ウォン、レントゲン検査が2万ウォン(約280円)、診断書が5万ウォン(約700円)などと記載された紙が掲示されているという。
薬代としては、鎮痛剤の価格も表示され、アスピリン錠剤が200ウォンなどとなっているという。
北朝鮮は1990年の旧ソビエト連邦の崩壊によりさまざまな援助が途絶え、1990年代後半の飢饉によって深刻な財政危機に陥っており、共産主義国の建前である「医療費全額免除」の原則が崩れ、一部代金を住民が負担するようになっていたが、今後は全額負担が当たり前になりつつあるようだ。