独身女性や離婚女性達のお金を巡る奮闘。これは自分の憂え事でもあると、ついホロリ
ゴールデンウイークに突入し、時間の余裕ができたところで、読書を楽しんでみては? 休日を充実させてくれるであろう新刊を紹介します。
『月収』原田ひ香/中央公論新社/1870円
月4万の年金では足りない66歳、大家業で定期収入を確保したい専業作家希望の31歳、親の介護を見越した一人娘が乗り出す投資信託など、登場人物が数珠繋ぎになる計6話の連作。月収20万円と30万円では1.5倍の差ではなく、(可処分所得で)3倍の差があるという記述に大ショック! パパ活から生前整理の会社立ち上げまで、同時代を生き抜く女性達の姿に活力をもらう。
息子と幼稚園で一緒の咲ちゃんとその母親の存在が流浪の旅のオアシスに
『熟柿』佐藤正午/KADOKAWA/2035円
豪雨の夜の運転で死亡事故を起こした警察官の妻で妊娠中のかおりは、刑務所で出産、出所直後に離婚する。誘拐未遂や不法侵入などで何度もパトカーに乗り、我が子を一目見ることも叶わず職を求めて西へ流浪。ぺっと吐く渋柿の渋さ、熟してトロトロになった時の天上的甘さ。幼い頃の庭の柿の味の記憶を蘇らせつつ、このド直球の母物のラストにねぎらいの感情が満ちてくる。
サメテガルは英語で〈It is equal to me〉。“どっちもアリ”の寛容性が老境を豊かにする
『70すぎたら「サメテガル」 「老害」にならない魔法の言葉』樋口裕一/小学館新書/990円
サメテガルは、カフカやピアフの歌にも出てくる仏語。「醒めてやがる?」とか「冷めて手軽?」と和耳で聞く人もいて、覚えやすいダジャレだ。サメテガルは、正義とか道徳とか常識的な振る舞いとか年配者が錦の御旗にしがちな価値観から距離を置き、どっちでもいいとする思考法。要は頑なにならないこと。個人的体験からも頑固自慢の老人ってめちゃ迷惑。新老人の薦めだ。
自分を生きたい女性達、妻を支配したい夫達。4月スタートのTVドラマにも興奮しそう
『夫よ、死んでくれないか』丸山正樹/双葉文庫/770円
バツイチでフリーライターの璃子、娘のいる専業主婦の友里香、バリキャリ街道驀進中の会社員の麻矢。固い絆で結ばれた無敵の三人組に次々と事件が起こる。記憶喪失になる友里香のモラハラ夫、麻矢の夫は女性の存在をにおわせ失踪し、彼女自身にもヘッドハンティング話が降ってくる。30代は女性が最も多感で激動する時期。シスターフッド(女性の絆)を描いて心が晴れる。
文/温水ゆかり
※女性セブン2025年5月8・15日号