ライフ

偏差値の導入を主導した政治家は従順な国民作ること目指した

 本来、日本人はポテンシャルが高いはずなのに、なぜ日本の国はこれほど落ちぶれてしまったのか。この疑問をとくカギ「偏差値(学力偏差値)」について、大前研一氏が解説する。

 * * *
 偏差値とは、周知の通り、入学試験で合格可能性を示す数値である。1960年代から受験業界で学力成績の指標として使用されるようになった。しかし、実は偏差値は単なる学力の物差しではない。“お上”が明確な意図を持って導入したものである。私はかつて、偏差値導入を主導した政治家から話を聞いたことがある。

 ベトナム反戦・第二次反安保、学園民主化などで大学闘争が活発化して東大安田講堂事件(1968~1969年)が起きた後、私が「日本はこのままいくと若い人たちが不満を募らせて、クーデターを起こすのではないか」と懸念を示したところ、その政治家は「大前さん、その心配はないですよ。国にもアメリカにも逆らわない従順な国民をつくるために『偏差値』を導入したのですから」と答えたのである。

 私は偏差値がそれほど重要な意味を持っているとは思っていなかったので非常に驚いたが、偏差値はそういう目的で導入された「システム」にほかならないのだ。

 偏差値によって、たしかに事前に効率よく学生を割り振って受験させることが可能になった。だが、学校側の工夫次第で、偏差値に関係なく才能ある学生を選ぶことは可能だ。実際、世界のほとんどの国には偏差値などなく、学生は自由に学校を選んで受験している。

 結局、日本で導入された偏差値は自分の「分際」「分限」「身のほど」をわきまえさせるための指標なのである。そして政府の狙い通り、偏差値によって自分のレベルを上から規定された若者たち(1950年代以降に生まれた人)の多くは、おのずと自分の“限界”を意識して、それ以上のアンビション(大志)や気概を持たなくなってしまったのではないか、と考えざるを得ないのである。

※週刊ポスト2013年9月6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

金スマ放送終了に伴いひとり農業生活も引退へ(常陸大宮市のX、TBS公式サイトより)
《中居正広と歩んだ17年》金スマの名物ディレクター・渡辺ヘルムート直道氏が「ひとり農業」生活を引退へ 番組打ち切りで変貌した現地の様子
NEWSポストセブン
ビアンカ・センソリ(カニエのインスタグラムより)
《母親が限界を迎えつつある》カニエ・ウェストの“透けドレス騒動”で17歳年下妻の親族が貫く沈黙
NEWSポストセブン
気象キャスターとして出演していたオ・ヨアンナさん(Instagramより)
《韓国メディア炎上》美人気象キャスターの遺書に“壮絶社内いじめ”〈長時間の叱責〉〈誤報をなすりつけ〉〈カカオトークで罵倒〉
NEWSポストセブン
コムズ被告(時事通信フォト)
《テレビリモコンを強引に押し込み、激しく…》“ディディ事件”のドキュメンタリー番組で女性が告発「性暴力を実行するための“共犯”がいる」、ショーン・コムズ被告は同番組を“1億ドル”で訴える【フリーク・オフ騒動】
NEWSポストセブン
オンラインを駆使した公務を行う雅子さま(2025年2月、東京・台東区。撮影/JMPA)
【“開かれた皇室”を目指して】皇居東御苑が「謎解きゲーム」の舞台に QuizKnockに謎の作成を依頼、雅子さまの“後輩”伊沢拓司氏もオープニングイベントに参戦
女性セブン
全国がん患者団体連合会などの関係者から署名を受け取る福岡資麿厚生労働相(右)ら。2025年2月12日(時事通信フォト)
《高額療養費制度」上限額引き上げ》がん患者が語る、長期にわたる治療でのしかかる経済的負担「家族がいてお金の心配がいらない患者ばかりじゃない」
NEWSポストセブン
『ニュースセンター9時』の司会を務めた草野仁さん(1981年)
《視聴率20%越えワイドショーの司会務めた草野仁》サリン事件を徹底追及も「今の情報番組は視聴者の知りたいことに切り込んでいない」明かしたテレビ業界が弱くなった原因
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《世界最大の出産ライブ配信》「1000人以上の男性と関係を持った」金髪美人インフルエンサー(25)に「子どもがかわいそう」と批判殺到
NEWSポストセブン
悠仁さま、筑波大学ご通学問題に“二刀流プラン”が浮上 「赤坂御用地から車で通学」と「大学近くの一軒家でひとり暮らし」を併用か
悠仁さま、筑波大学ご通学問題に“二刀流プラン”が浮上 「赤坂御用地から車で通学」と「大学近くの一軒家でひとり暮らし」を併用か
女性セブン
昨年末に妊娠を公表して以来、初めての公の場に現れた真美子夫人
大谷翔平の妻・真美子さん、注目を集める“ファストファッション中心のスタイリング”の金銭感覚 ハイブランドで着飾る「奥さま会」に流されない“自分らしさ”
女性セブン
「令和ロマン」高比良くるま
《令和ロマン・高比良くるま》不倫交際のお相手・既婚女性に「ティファニーのペアリング」を渡すも突然の“ポイ捨て” 直撃取材に「すみません…すみません…」
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告と父・修被告
田村瑠奈被告の父・修被告に懲役10年求刑、検察官の主張は「浩子被告が就寝するのは極めて不自然」「自宅に遺体があるのはデメリット」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン