数年前、バレンタインデーのチョコレートが高級化・ブランド化し、原材料の価格が上がると、知り合いの暴力団幹部はカカオ豆の買い占めに乗り出した。付け焼き刃の知識で参入したところで失敗するだろうと思っていたところ、海外から仕入れた賞味期限切れカカオ豆やチョコレートを混ぜて問屋に販売し、莫大な利益を上げたのだ。
ブームの裏には必ず暴力団がいる。
暴力団が表看板としての正業を持つようになったのは、それまでメインだった賭博事犯が非現行犯で逮捕・起訴されるようになり、違法行為に依存すると行き詰まるという危機感からだった。そのため山口組三代目組長の田岡一雄は、常々組員に「正業を持て」と言い続けた。
だが、暴排条例が施行され、いかなる理由だろうと暴力団と交流・取引をした一般人が違法とされるようになった。博徒はお天道様の下を堂々と歩けない日陰者を自認し“無職渡世”と称していたが、今や社会的に合法な商売をすると、取引相手が罰せられるため孤立無援で、建前上、文字通り無職でなければならない。
だが、暴力団は今もしっかりオモテの経済に寄生している。彼らだけを社会悪として排除することは困難であり、我々日本人は知らず知らずのうちに暴力団の共犯者なのである。
※週刊ポスト2019年6月28日号