金仁成氏らの激しい抗議に対して、会場内にいた民族問題研究所のスタッフや、関係者が猛烈に反論を始めた。
「ここは被害者団体が話をする場所ではない!」
「必要であればみなさんで別の団体を作ってください。私達は私達でやります」
徴用工のシンポジウムから排除しようとするかのような言葉を並べ始めたのだ。私はこうした言葉に徴用工問題の本質がよく表われているように思えた。つまり徴用工問題は、市民団体(ここでは民族問題研究所)が反日活動をしたいが為の“道具”でしかないということなのだ。
しかも彼らが元徴用工の救済を第一に考えているのかといえばそれも違う。前述のように他の団体の声を無視し続けていることに、それは象徴されているだろう。常に市民団体が掲げる反日イデオロギーが優先され、当事者の声が無視され続ける、という日韓・歴史問題における不条理がここでも見て取ることができた。
結局、シンポジウムでは対立は解消されないまま終了した。こうした背景を知っているはずの韓国メディアも、反日を標榜している民族問題研究所への批判を行なわないため、徴用工問題はますます歪な形へと発展していってしまう。なぜシンポジウムで抗議活動をしたのか、金仁成氏に話を聞いた。
「14日のシンポジウムでは、民族問題研究所が北朝鮮労務者も入れて徴用工問題を提起しようと考えていると聞いて、これは大きな問題だと思い抗議に行くことにしたのです。なぜ私たち被害者団体が置き去りにされたまま、そんな重要で危険なことまで勝手に始めるのか。これは打破しなくてはいけない、という危機感を持ちました。市民活動家が被害者団体を無視して日韓関係を悪くしている現状は、間違っていると思います」
反日政策を掲げる文在寅大統領のもと、民族問題研究所などの市民団体・活動家はその発言権を大きくしていった。そして、彼らの背後には常に北朝鮮の姿が見え隠れしているのだ──。
“反日イデオロギー”に苦しめられているのは、決して日本サイドだけではない。韓国の徴用工関連団体もまた同様に苦しめられているのだ。
【プロフィール】赤石晋一郎(あかいし・しんいちろう)/『FRIDAY』『週刊文春』記者を経て今年1月よりフリーに。南アフリカ・ヨハネスブルグ出身。