菅のふるさと納税導入の舞台裏をそう打ち明けるのは、元総務官僚の平嶋彰英だ。
「菅さんは、小泉政権時代の竹中平蔵総務大臣に副大臣として仕えたことが、政治家としての転機になっています。菅さんはその後、竹中さんから総務大臣を引き継いだ。そのとき『高橋君の言うことを聞いたらいいよ』とアドバイスされたと聞きました。高橋さん自身も『私がふるさと納税を菅大臣に進言した』と言っていました」
平嶋は総務次官候補と目されていた。だが、第二次安倍政権の2015年当時、自治税務局長の職にあり、高額返礼品の過当競争などふるさと納税の欠陥について菅に意見したばかりに、出世街道から外されてしまう。この年7月の定期人事で自治大学校の校長に左遷され、次官になれないまま2016年に退官する。
谷垣の二番煎じ
竹中は菅が政策の師と仰ぐ文字どおりのブレーンだが、その竹中が頼りにしているのが、元財務官僚の高橋なのだという。ある財務官僚が解説する。
「世間では竹中さんを政策通だと見ているようですが、実際には説明がうまいだけで、さほど政策に詳しいわけではありません。竹中さんは高橋さんを理論的な支柱にし、具体的な政策はコンサルタントの福田隆之さん(元官房長官補佐官)に立案させてきた。どれも竹中、高橋ラインの新自由主義的な政策ですから、ふるさと納税が金持ち優遇になるのは、ある意味、当たり前なのです」
嘉悦大学教授の高橋は菅内閣発足に伴い、内閣官房参与として政権に加わった菅ブレーンの一人でもある。東京都立小石川高校から東大理学部に進んで1978年に卒業したのち、経済学部に再入学し、1980年に2度目の卒業をして旧大蔵省入りする。この間、旧文部省の統計数理研究所の非常勤研究員として働いた経験もある。