宮沢准教授が続ける。
「これから他の国でインド型変異株が流行るのかも不明です。(同型の変異株は)日本を含め、すでに世界19か国で確認されていますが、今のところ既存の株に置き換わるほど感染が拡大しているという事実はありません。
一般論として、変異して弱毒化したウイルスのほうが、感染が広がりやすい。強毒化すると宿主がすぐに発症して寝込んで動けなくなったり、死んだりするので、ウイルスをばらまけなくなるからです。だから、もしインド型変異株が置き換わって流行るのなら、弱毒化している可能性が高い。日本で増えているイギリス型変異株も、感染率や重症化率が高いと言われていますが、陽性者は増えている一方で、発症率は下がっています」
大雑把な計算だが、インドの1日当たりの新規感染者数が40万人で同死者数が4000人であれば、致死率は1%。同じ計算方法で比較してみると、たとえば、アメリカの新規感染者ピークは2021年1月12日の約25万人で、この日の死者数は約3400人なので同1.4%、ブラジルのピークは2021年3月26日で感染者約7万6000人に対し死者は約2400人で、同3.2%である(Our World in Data参照)。
しかし、仮に弱毒化して重症化率や致死率が下がっていたとしても、感染者が大幅に増加すれば、それに伴って重症者や死者の絶対数が増える事態は避けられなくなる。宮沢准教授は昨年来、ウイルスに曝露される量を100分の1にすれば感染は防げるとする「100分の1作戦」を提唱し、「石鹸は不要だが、こまめに手を水洗いする」「エアコンをかけていても換気する」といった対策を推奨している。
緊急事態宣言も3度目ともなれば、世の中の空気が緩むのは避けられない。変異株の流行には改めて気を引き締め直し、実効性のある感染対策を徹底する必要があるだろう。
◆取材・文/清水典之(フリーライター)