イースト駅前クリニック新橋院の瀬田真一院長
男子たるもの、歴史に名を残すことができたとしても、肝心のときに不如意というのはいかがなものか。イースト駅前クリニック新橋院の瀬田真一院長は、深くうなずいた。
「EDの罹患率は深刻で、疫学調査によると40代で5人に1人、50代後半だと2人に1人がEDだと報告されており、患者数は実に1130万人以上だと推定されています」
ちなみにEDには、まったく勃起せず性交不能の「完全ED」から、ときどき性交できない「中等度ED」、たまに性交できない「軽症ED」まで、いくつかの段階がある。性交中にペニスが委縮してしまう、いわゆる“中折れ”もEDの症状のひとつだ。瀬田院長は続けた。
「いずれも医師の治療と適切な対処が必要です。おかしいなと感じたら、すぐ医師に相談してください」
とはいえ下半身のコトだけに、恥ずかしさが先にたってしまうのも事実。ある調査によると、ED患者のうち実際に受診するのは、わずかに4.8%にすぎないという。だが、瀬田院長は笑顔をみせる。
「当院はスタッフ全員が男性です。診察も問診がメインですから、医師の前でパンツを脱ぎ、ペニスをまじまじと観察される心配はありません。しかも問診時間は10分から15分くらい。初診料や診察料は不要で、費用は薬代だけです」
EDは、さまざまな要因が引き金となっておこる――心因性、精神病などによる「機能性勃起障害」、陰茎や神経、血管、内分泌などに支障や欠陥のある「器質性勃起障害」、さらには「混合性勃起障害」といって糖尿病や腎不全、泌尿器科疾患、外傷や手術、加齢などいくつもの要因が重なったものもある。他の病気を治すために服用している、薬剤の副作用や後遺症で誘発されることもあるから要注意だ。瀬田院長は表情を改めた。
「中高年に注意を喚起したいのは、EDの症状が生活習慣病と密接な関係をもつ点です。EDの裏側に高血圧や脂質代謝異常、糖尿病、うつ病などが潜んでいる可能性は決して低くありません。逆の表現をすると、EDは生活習慣病の一症状だと考えてもいいのかもしれません」
しかし、捨てる神あらば、拾う神あり――1999年に「バイアグラ」が発売されたことで、ED患者に「薬物療法」という明るい光が差した。
「正式には『PDE5阻害薬』といいます。勃起のメカニズムを概説すると、まず視覚や触覚などの性的な刺激が脳に届くことから始まります。それが、脊髄を通してペニスの勃起神経に伝達されるんです。すると、血管内皮細胞からNO(一酸化窒素)が産出されます」
NOは細胞内のcGMP量を増やす。このcGMPは、普段は収縮しているペニスの海綿体の筋肉を弛緩させる役割がある。そのおかげで、動脈から多量の血液が海綿体に流れ込み、勃起に至るわけだ。
「ところが、PDE5は細胞内のcGMPを分解してしまいます。勃起が収まるためにはPDE5は必要なのですが、異常に増えてしまうと、そもそも海綿体に血液が流れません。PDE5阻害薬は、勃起に欠かせないcGMPを分解するのを防ぎ、EDを回避するのです」