日本のものづくりを担ってきたのは下町の工場であり、こだわりの技を受け継いできた職人だろう。その職人が姿を消しつつある。薄利多売に馴染まない手仕事で生み出される品々は、大量生産の荒波に駆逐され、若者たちは厳しい修業を強いられる職人の世界に目を背ける。
事実、職業訓練校は生徒が集まらず、休校、廃校に追い込まれている。大工を養成する木造建築科の生徒は、平成6年の時点で全国に1600人いたが、15年後にはわずか680人に減少している。このままいけば、日本の古き良き伝統が失われる。
今こそ職人の技と伝統を語り継ぐ必要があるのではないか。そうした職人の一人が、京都の仏像彫刻師・須藤隆さん(37歳)。創業36年の須藤工房の2代目だ。
須藤さんが、親方である父・光昭さんから受けた教えは、「仏師は仏の道を歩む人だが、仏像彫刻師は仏像を彫る職人」。大学時代から父の工房で仏像彫刻を習い、大学の助手の仕事を辞めて12年前に正式に入門した。
「修業期間の10年は『住み込み』が条件。仕事を覚えるには住み込みが一番なのですが、弟子は私のほかに女性が4人。最近まで男の子が1人いたのですが、3か月で辞めてしまいました。男の子にはキツイようですね」と嘆く。
「今私たちが積んでいる修業は、親方が発するヒントをいかに敏感に受け止めるかということ。まだまだ緊張の連続です」(須藤さん)
撮影■小倉雄一郎
※週刊ポスト2011年12月9日号