今や、大阪・梅田の名所のひとつとさえ言われている『ウエダ商店』。大阪では、角打ちというより立ち呑みといったほうが通りがいいようだが、いずれにしても、そのイメージは、酒屋の片隅の狭いスペースで飲むからこその角打ち。しかし、この店は、吉本的お笑い用語で言うところの“ひろっ”。そう、広いのだ。間違いなく、大阪最大級といえる広さを持っている。
2ヶ所ある入り口のうちのビル内側から入ると、目の前に長さがおよそ8m88cmあるというカウンターが開がっている。ちなみに、その高さは約108cm。集まる客の煩悩の数と考えるのはこじつけだろうか。
ビルの外、四ツ橋筋側から入ると、いくつも置かれたへその高さほどのテーブルやビールケースを客が囲み、迷路を作り出している。
「50人は入れるでしょうか。贔屓にしてくださるお客さんが増えて、だんだん酒屋のスペースが奥に追いやられて小さくなりました」看板女将でもある尾上(おのうえ)陽子社長(71)は、名前どおりの太陽のような明るい笑顔で、賑わう店の中を忙しく歩き回っている。
戦前は下駄屋さん。終戦直後の昭和20年に父親が始めた角打ちのできる酒屋を、その父親が他界して尾上社長が2代目を継いだのが昭和59年。
「最近は若い人同士、年配の人同士という形が増えましたね。昔は上司が若手を連れてきて、その若手が年を重ねてまた若手をという繰り返しを見てるのも楽しかったんですよ」(尾上社長)
いずれにしても、この日もやっと6時を回った時間帯にも関わらず、結構な混みようだ。
「ここは、会社と自宅の中継点にあるハブ飲み屋。オンとオフを切り替える絶好ポイントなんです。実は今、焼酎ハイボールに魅かれてましてね。甘くないドライな味がガツンと来る。ぼくら世代にドンピシャな酒でしょう。それにしても、梅田でこの値段。1000円でこれだけ酔えるなんて幸せですよ」
これは20年通っているという、49歳の会社員で、同世代の仲間と3人連れだった。