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常連客が「豊橋の三つ星」と称す家庭料理を楽しめる角打ち

「帰りはいつも乗るつもりの次の次の次の電車になるね」(常連)

『立呑あさひ』の紺の暖簾を分け、引き戸をがらりと開ける。するとすぐに「いらっしゃいませ」の明るい声がかかり、アイドル並みのかわいい笑顔に迎えられる。

「もう何年通っているか覚えていませんが、初めて来たときから現在に至るまで、この声とこの笑顔で、すぐに気分が浮き立つんです。彼女こそ、まぎれもない看板娘ですよね」(60代)と、豊橋のサラリーマンたちを夢中にさせているのは、斉藤久代さん。

「昭和13年の生まれだから、75歳になりました。2代目の主人にお嫁に来た昭和35年から、カウンターの一番入り口に近いところに立って、お客さんをこうやってお迎えして、ありがとうございますと見送っているんです。だって私、他にできることがないですから」と、例のあの笑顔がこぼれる。

 旭屋酒店として昭和2年に創業。立ち呑みも、久代さんが嫁いでくる以前の昭和23年から始まっている。

「初めは恥ずかしかったですよ。図太くないですからね。でも、紳士な方ばかりの今と違って、悪さをするお客さんがときおりいましてね。そんな人には、出て行きなさいよ!二度と来ないで!なんて啖呵切ったこともあるんです」

 いつの時代も男が憧れる、やさしくて強い、素敵な女性がそこに立っていた。

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