「特定秘密保護法」が今国会で成立しようとしている。本誌名物の覆面官僚座談会では財務省中堅官僚A氏、経済産業省中堅官僚B氏、外務省若手官僚C氏、防衛省若手官僚D氏が集まり、特定秘密保護法をめぐる政治家と霞が関のせめぎ合いの内幕について話し合ってもらった。
(司会・レポート/武冨薫)
──特定秘密保護法案が成立しても、罰則強化は形だけ。秘密を漏らした官僚は起訴されない。官僚はみんな困らないとタカをくくっているわけですか。
経産B:いや、現状では法律ができても秘密なんてどんどん抜かれるといいたい。実際に法案が成立する前から、漏洩事件第1号が起きたじゃないか。新設される国家安全保障局の人事がスッパ抜かれて、菅義偉・官房長官が激怒している。
外務C:大変なことになっています。わが省の谷内正太郎・元事務次官(現・内閣官房参与)の安保局長内定は早くから報じられていたが、産経新聞(11月14日付)が他の主要ポストの人事を詳細に報じた。
人事担当の菅官房長官は、「機密保持の要となる国家安全保障局の人事が漏れるとは何事か。人事は白紙に戻す」と怒っていて、世耕弘成・官房副長官が情報漏洩者を特定するために内閣官房のスタッフ数十人から聞き取り調査を行なった。うちの幹部も調査の対象となったようだ。
財務A:人事案は12月の発令に備えて練られていたとはいえ、報道は法案も成立していない段階。その人事が漏れたのだから官邸はメンツ丸つぶれだろう。
経産B:安保局の幹部人事は外務、防衛、警察が争い、防衛3、外務2、警察1の配分となった。ポスト獲得戦に勝った防衛省から漏れたと外務省は見ているようだね、Cさん。
外務C:いやいや。記者は各省に取材したはずです。記事は担当分野まで細かく書いているから、おそらく産経は幹部の氏名と担当分野が書かれた人事案の文書を入手している。それでも、最終的には人事権者サイドから裏取りしなければああまで断定はできない。