何気ない日常をYouTubeに載せ、広告収入で家族5人が生活している――アカウント名「妄想グルメ」は、22万以上のチャンネル登録数を持つ人気コンテンツだ。内容は、かわいらしいデコレーションのスイーツを作るプロセスだったり、ふりかけをキャラクターの容器に入れる、買ったまま忘れていたおもちゃを開封して、完成するまで――などといった、いわば“とるに足らない”と思われるようなできごと。
しかしそれらの動画が、大手ポータルなどでピックアップされたり、そのライフスタイルがNHKの「クローズアップ現代」やネットニュースで取り上げられるなど、注目が高まっている。11月30日には、妄想グルメ・父こと伊藤元亮さんによる『YouTubeは僕たち家族の日常をお金に換えてくれました』(徳間書店)も出版された。
YouTubeや動画投稿というと若い世代の利用が多いが、伊藤さんは1968年生まれの45歳。著書の中でも「インターネット的なこと全般に明るくありません」「老眼と物忘れの兆候が出始めた年頃」などの記述が何度も出てくるのだが、「こういう働き方は若い人よりも、自分と同年代や年上の人たちに、勧めたいんです」と語る。どうしてそう思うのか?
バブル期の終わりにメーカーへ勤め始め、結婚し、3人の子供にも恵まれた中で、起きている時間のほとんどを仕事に費やす日々。伊藤さんの周りには、99%仕事の生活で追い詰められ、うつやパニック障害になった友人、自殺してしまった人もいたという。そうした生き方に疑問を覚え、99%家庭に使える働き方を模索し、35歳の時にサラリーマンを辞めて起業する。しかしあくまで“99%家庭”という姿勢から、ガツガツ営業をして忙しくなるのは“違う”と思い、アフィリエイトブログを始めてみたり……と紆余曲折を経て、2009年に動画投稿に辿り着いた。
『YouTubeは僕たち家族の日常をお金に換えてくれました』は、そうした生き方やメッセージだけではない。非常にわかりやすい実用書で、巻末には伊藤さん自身がYouTubeを始めた当初に苦労した、アカウント登録の取得マニュアルも掲載している。また実用的なのは、そうした作業手順に限らず、テーマの選び方や楽しみ方、気をつけるべきポイントなど、初めてチャレンジする人にとって、具体的で役に立つ内容になっている。
そして同世代なら“わかる! そういうこと、あるね”と、ちょっと笑えるエピソードも交えて繰り返し書かれているのは、「“特別なもの”や“おもしろいもの”を撮ろうと、構える必要はありません」「顔を出したり、個人情報を出さなくても大丈夫ですよ」「イヤなコメントをする人に、どう対処すればいいか」といった、続けるために大切なこと。