家庭用ゲーム機「Wii U」が売れず、3期連続の営業赤字(2014年3月期は350億円の赤字予想)に転落する見込みの任天堂。
社内外からは岩田聡社長の退任論が浮上しているが、果たして社長のクビを替えただけで任天堂は復活するのだろうか。
確かに、今期1000億円の営業利益を“コミットメント(公約)”としていた岩田聡社長が、大風呂敷を広げすぎた感は否めない。エース経済研究所アナリストの安田秀樹氏がいう。
「Wii Uの販売が振るわないのはソフト不足。2012年の発売直前に大きなトラブルを起こして『スーパーマリオブラザーズU』と『ニンテンドーランド』に続くソフト発売までに間があいてしまった。ゲーム機はソフト欲しさに買う人がほとんどなので、出だしで躓いたダメージは大きかったのです。
そんな苦境にありながら、岩田社長は自ら掲げた1000億円の公約に縛られるあまり、大胆な値下げも決断できませんでした。
2011年の赤字で『ニンテンドー3DS』を1万円値引きしたときには、業績で1000億円以上のマイナスインパクトを受けましたが、結果として3DSの販売数量を増やすことに成功。今回はそうしたテコ入れ策も打てないまま最悪の結果になってしまいました」
市場関係者からは「それほどハードルの高い公約ならしないほうがよかったのでは?」との声も聞かれたが、「単なる目標のはずだったのに、数字ばかりが独り歩きする状況に意地を張り、1000億円の旗を降ろすに降ろせなくなった」(全国紙記者)というのが岩田氏の本音らしい。
岩田氏は1月17日に開かれた会見で引責辞任をしない考えを表明し、月末の経営方針説明会で起死回生策を発表する構えだという。
業界内では、これまで任天堂が避けてきたスマホやタブレット端末との連動やゲーム課金という“パンドラの箱”をついに開けるのではないかとの憶測も広がる中、前出の安田氏はこんな違った見方を示す。
「いくら開発費が安いといっても、『パズドラ』の人気がピークを過ぎたようにスマホ向けゲームも決して好調とはいえません。課金についても長期的な収益確保につながる保障はありませんしね。
ただ、Wii Uについては生半可な方向転換では挽回できません。音楽や映画などゲーム以外の分野からも利益を取れるようなビジネスに結び付けるとか、収益機会の多様化を目指さなければ、さらなる赤字も覚悟しなければならなくなるでしょう」