大手電機メーカーとしての威信をかけて経営再建に取り組んでいるソニー。2013年9月中間連結決算では、ようやく本業のエレクトロニクス(電機)事業の営業利益が前年同期の177億円の赤字から103億円の黒字に転換し、復活の手ごたえを感じさせた。
だが、「物言う株主」の評価は依然厳しく、それが大きな波紋を呼んでいる。
ソニーの大株主である米ヘッジファンド、サード・ポイントのダニエル・ローブCEO(最高経営責任者)が投資家に宛てた書簡(1月21日付)によると、<ソニーの成長ベクトルは有望>としながらも、<その進展にはパソコンとテレビ事業の再編に向けた真剣な取り組みが必要>と、さらなるリストラ要求さえ示唆するものとなっている。
さらに、ソニーの平井一夫社長に対しては、<難しい決断を下して収益目標を達成して欲しい>と苦言を呈しているという。
この“決断”とは何なのか。一部のアナリストから挙がったのは、なんと「VAIOブランドの消滅」、つまりパソコン事業からの撤退という衝撃的な予測だった。
もちろんソニーが認めているわけではないが、「その可能性もあり得ないわけではない」と話すのは、全国紙の経済部記者だ。
「国内のパソコン市場はスマホやタブレットとの競争が激しいうえに、『ウィンドウズ8』対応のパソコンが使い勝手の悪さから、各社とも販売台数が想定を下回る苦しい状況。ソニーの『VAIO』も例外ではなく、2014年3月期の販売予想を620万台から580万台に下方修正。せっかく販売好調なスマホ『エクスペリア』の足を引っ張っている状態です」
先細りのノートパソコン事業をどう立て直すかは、ソニーにとっても頭の痛い問題だったのは事実。
一方、平井社長が公約にしてきたのは、今期のエレクトロニクス事業の黒字化。その最大のハードルと指摘されていたテレビ事業については、2013年4~6月期に3年ぶりに黒字になるなど、トータルで目標達成は果たせそうな雲行きだが、将来も持続的な成長が見込めるかというと、どうも心許ない。経済誌『月刊BOSS』編集長の関慎夫氏がいう。
「テレビの利益が出ているといってもようやく水面上に上がったばかりで、まだ儲けているレベルには程遠い。高精細の4Kテレビが世界をリードしているわけでもありませんしね。
ただ、ソニーにとってはエキレ事業の顔であるテレビを手放すわけにはいきません。仮に1年後に再び赤字に喘ぐようなら、今度はサード・ポイントからテレビ事業の撤退を要求されてもおかしくない。それに比べたらパソコンの撤退は、まだ影響の少ない決断なのかもしれません」