ライフ

井沢元彦氏「ピラミッド=王の墓説は誤解。建設意図は不明」

 シリーズ累計490万部となる大ベストセラー『逆説の日本史』を本誌で連載中の作家・井沢元彦氏が、新たに挑戦し大きな話題を呼んでいる歴史ノンフィクション『逆説の世界史』。これまで、ウェブマガジン上のみでの公開だった同作品が、先日ついに単行本として発売された。“新たなライフワーク”と語る同シリーズに対する、井沢氏の意気込みを聞いた。

 * * *
『逆説の世界史』という新シリーズを始めた目的は二つあります。ひとつは歴史というものを人類共通の知恵として多くの読者に理解してもらいたいということ。もうひとつは、「文明はどのように発達し、なぜ衰退するのか?」という疑問を追究したいということです。

 そこでまず最初にとりあげたのが、「古代エジプト文明」です。紀元前三〇〇〇年頃に初期王朝が始まり、約三千年間続いた後、最後のプトレマイオス朝がローマ帝国に滅ぼされたことで終わりました。ひとつの文明が三千年も続いたのは驚くべきことですが、逆に三千年も続いたのに、どうして現在に継承されたものがほとんどないのか? じつに不思議です。

 連載を始めるにあたって私は、エジプトの古代遺跡を訪ねることにしました。夜明けにホテルを出発して日が暮れるまで取材、という日々を続け、北はカイロから南はアブシンベルの大神殿まで、総移動距離三千キロもの取材行になりました。

 エジプトの古代遺跡といえば、誰でも思い浮かぶのはピラミッドでしょう。なかでもカイロ郊外のギザにある、「三大ピラミッド」が有名です。実際に目にするとその巨大さに圧倒されます。そして、これほどのものをいったい何の目的で作ったのだろう?という疑問が、あらためてわきました。

 読者の中には、「ピラミッドは王の墓」という「定説」を信じている人もいるでしょう。しかし、これは大きな誤解です。ピラミッドは墓ではありません。意外に思われるかもしれませんが、これまでの発掘調査で内部に王のミイラが棺に入っている状態で発見されたピラミッドはほとんどありません。つまり、ピラミッドは王のミイラの収納施設=墓ではないといえます。

 では、いったい何のために作られたのか? これだけ科学が発達した現在ですら、わかっていません。これこそ、古代エジプト史最大の謎といっていいでしょう。なぜわからないのかというと、それが記録されたものがまったく残されていないからです。常識で考えれば、ピラミッドほどの建造物であれば、どのような目的で建設されたかということがピラミッド自体に記されているはず。

 ところが、内部に古代エジプト文字「ヒエログリフ」が刻まれたピラミッドもありますが、肝心の「このピラミッドが何の目的で作られ、どのように使われたか」についてはまったく触れられていないのです。それはなぜか。私は「言霊」のせいだと考えます。

関連キーワード

関連記事

トピックス

2025年初場所
初場所の向正面に「溜席の着物美人」登場! デヴィ夫人の右上に座った本人が語る「観客に女性が増えるのは相撲人気の高さの証」
NEWSポストセブン
たびたび人気メニューを生み出す牛丼チェーン店・松屋。今回の新作は”激辛四川料理”だ(松屋公式Xより)
「辛すぎて完食できない…」「あるまじき量の唐辛子」激辛好きの記者も驚き…牛丼チェーン・松屋の新メニュー『水煮牛肉』 本社が語った“オススメの食べ方”とは
NEWSポストセブン
放送作家の山田美保子氏(左)とフリーアナウンサーの馬場典子氏が対談
激戦の女性アナ界、“新女王”田村真子アナの座を脅かすのは誰か? 岩田絵里奈アナ、原田葵アナ、鈴木奈穂子アナ…職人アナとキラキラアナの二極化時代に
週刊ポスト
ミャンマーとタイの国境沿いの様子(イメージ)
《「臓器売られる覚悟」「薬を盛られ意識が朦朧…」》タイ国境付近で“消える”日本人女性たち「森林で裸足のまま保護」
NEWSポストセブン
小室圭さん(左)と眞子さん(右)
小室眞子さんの“後見人”が明かすニューヨークでの生活と就活と挫折「小室さんは『なんでもいいから仕事を紹介してください』と言ってきた」
女性セブン
ビアンカ・センソリ(カニエのインスタグラムより)
《“ほぼ丸出し”ファッションに賛否》カニエ・ウェスト、誕生日を迎えた17歳年下妻の入浴動画を公開「彼なりの円満アピール」
NEWSポストセブン
販売されていない「謎の薬」を購入している「フェイク動画」(instagramより。画像は一部編集部にて加工しています)
「こんな薬、売ってないよ?」韓国人女性が国内薬局「謎の薬」を紹介する“フェイク広告動画”が拡散 スギ薬局は「取り扱ったことない」「厳正に対処する」と警告
NEWSポストセブン
教室内で恐ろしい事件が(左は現場となった法政大多摩キャンパス内にある建物、右は教室内の様子)
「女子学生の服が血に染まって…」「犯行直後に『こんにちは!』」法政大・韓国籍女子学生が“ハンマー暴行”で逮捕、学友が語った「戦慄の犯行現場」
NEWSポストセブン
ドジャースでは多くの選手が出産休暇を取っている(USATodaySports_ReutersAFLO)
大谷翔平、第一子誕生へ 真美子夫人の出産は米屈指のセレブ病院か ミランダ・カーやヴィクトリア・ベッカムも利用、警備員増員などで“出産費用1億円超え”も
女性セブン
中居正広の女性トラブルで浮き上がる木村拓哉との不仲
【全文公開・後編】中居正広の女性トラブル浮き上がる木村拓哉との不仲ともう一つの顔 スマスマ現場では「中居のイジメに苛立った木村がボイコット」騒ぎも
女性セブン
たぬかな氏から見た弱者男性とは
「弱者男性はブス女性よりも生きにくい」元プロゲーマーたぬかな氏が断言した「弱男」の厳しい現実とヒエラルキー
NEWSポストセブン
第49回報知映画賞授賞式で主演女優賞を受賞した石原さとみ
石原さとみの夫が経済紙に顔出しで登場 勤務先では幹部職に大出世、複数社で取締役を務め年収は億超えか 超スーパー夫婦の‘秘策”は瞑想
女性セブン