朝日新聞は2月11日に「売れるから『嫌中憎韓』」という特集記事を掲載した。ようは日本の出版界が売れるからという理由で中国、韓国に対する悪感情を煽っているというのだ。しかし問題は朝日の報道姿勢にあるのではないか。作家の井沢元彦氏が解説する。
* * *
朝日は「嫌中憎韓」などという言葉を使うが、週刊誌や書籍による中国・韓国への批判は、決してそんな扇情的なものではない。
中国は尖閣諸島への領海侵犯を繰り返しており、これは日本がきちんと対処しなければならない問題のはずだ。あるいは、韓国はたとえば対馬から仏像を盗んでそのままにしている。これも、日本として毅然と対応すべき問題だが、どちらも朝日に言わせれば、「嫌中憎韓を煽る記事」になってしまう。それはおかしい。
むしろ問題は、これまでの朝日新聞の報道姿勢のほうだ。朝日は日中友好、日韓友好の旗印のもと、これまでそうした現実から目を逸らそうとしてきた。朝日が問題視する扇動報道よりも、朝日自身の偏向報道のほうが明らかに悪質である。
朝日新聞は、正確で的確な情報を国民に提供し、民主国家の主権者である国民が正しい判断ができるように支援するという、報道機関の基本原則あるいは倫理を決定的に踏み外している。
その典型が、私が戦後日本の新聞史上「最低最悪」だと考える「読者と朝日新聞」(1982年9月19日付)だ。筆者は当時の東京本社社会部長である。この頃、文部省の教科書検定において歴史教科書中の「中国への侵略」という文言が「進出」に書き改められたと新聞・テレビ各社が一斉に報じ、その1か月後に中国政府から抗議があった。
朝日ばかりでなく、すべてのマスコミが中国の代弁者と化し、これはけしからんと国と文部省を責め立てた。だが、後にこれは誤報であることが明らかになった。