東京マラソン2013の男子1位、2位、NYCマラソン男子1位のランナーたちが使用したシューズには同じ新素材「ブーストフォーム」が使用されていた。そのブーストフォームを搭載した『エナジーブースト』(アディダス)の、衝撃を吸収するのに反発する履き心地とシューズ革命について、作家の山下柚実氏が報告する。
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ふわっ。
足が地面に着地する瞬間、私の踵は靴底に柔らかく受け止められた。
続けて、その力がバネのように「ぽよん」と反発し、ふくらはぎに伝わってきた。
ふわっ、ぽよん。初めて味わう不思議な感触。
弾む。どんどん足が前に出ていく。これならどこまでも歩いていけそう。走れそう。
靴の裏にバネが付いているわけではもちろんない。私が履いているのは新素材「ブーストフォーム」が搭載されたランニングシューズだ。こんな足でマラソンを走ったらどうなるのだろう。まさか、自己ベストタイム連発とか?
調べてみてびっくり。「東京マラソン2013」男子の1位と2位、そして「ニューヨークシティーマラソン2013」の男子1位の栄冠を勝ち取ったランナーの足元に、この新素材「ブーストフォーム」搭載のシューズが装着されていたのだった。
2013年2月、「ブーストフォーム」を搭載した『エナジーブースト』がアディダスから発売された。続けてブースト搭載モデルが次々に登場。一時は在庫切れを起こす人気を博し、アディダス直営店でランニングシューズ販売の過去最高記録を更新した。“ブースト効果”で同社のランニングカテゴリーも2桁近く成長。そして世はランニングブームの真っ最中。アディダスが放つ「シューズ革命」に迫った。
「アディダス」と聞くと、マラソンよりもサッカーを連想する人のほうが多いかもしれない。だが同社のシューズは「走る」ことと深く結びついていた。
創業者アドルフ・ダスラーのニックネーム「アディ」と「ダスラー」を組みあわせた社名がアディダス。その創業者は陸上の選手だった。
「弊社の原点としての陸上競技用シューズをもう一度見つめ直し、根底から問い直すプロジェクトがスタートしました」と同社ブランドマーケティングマネージャー・西脇大樹氏(29)は語り始めた。
「勝負をかけて開発したのがブーストフォームです」